「……弱ってんね」


「ん、弱ってる。架椰にしか話せないし、架椰にしか治せないと思うわ」



他人が聞いたら、あまいだけの猛毒をはいて、隣にすわるようにとベッドへと招く識稀。


深いため息をつきながらも、“私だけ“ と。

そんなあまいニュアンスに誘われるように、識稀がふれて指定してきた場所へ、まんまと腰をおろしてしまう私は、もう、末期でしかない。




そんな私を知りもしない識稀は、すがるような目で、容易に私を捕まえて。首筋に顔を埋めてきたままに、体重を預けてくる。

脇腹にまわされたオトコの手と、支えきれずに倒れたベッドの生々しさ。首にかかる自分以外の熱すぎる吐息に、くすぐられて期待をして、欲情しているのは、…私だけ。




「……今日の架椰、あつい」

「お風呂から出てきたばっかだからね」



呑まれそうな心音が、いっそのこと伝わってしまえばいいのにと、体をよじって、識稀の顔がみえるようにと動く。

体制が変わるとすぐに、お風呂あがりで、キャミソールと簡単な羽織しか身につけてない私の胸に、遠慮もなくあまえてくる、識稀は。



そこまでしてもなお、私に欲情なんてしない。



高校2年生なんて盛んな時期のはずなのに、識稀にとっての私は、例外だ。


識稀は私のことを、家族、としか、思っていないから。




「…沙夜(さよ)さんと、なにがあったの?」


今だって、4.5年も想いを寄せ続けている、他のオンナに関する相談を、私にしにきただけなんだ。