「俺のことは“健ちゃん”って呼んでね、茉白ちゃん」
「え」


「トモダチなんだから、あだ名で呼ばないと」


あだ名で呼ぶのは確かに友だちっぽいけど……。
“健ちゃん”って呼ぶのは……。


「さ、猿渡くん……じゃだめなの?」


男性を“ちゃん”付けで呼ぶのはさすがにハードルが高いため、聞いてみる。
けれど、すぐに「だめだめ」と返された。


「け、け、け、健くん、は?」


“ちゃん”ではなく、“くん”。
碧や鷹樹組の組員以外の男性を、名前で呼ぶことはそうそうないから変に緊張。


「まぁ、それでもいいや。これからよろしく、茉白ちゃん」


猿渡健一郎──健くんがそう言ったすぐあとのこと。


──ガラッ!と大きな音を立てて保健室の扉が開いた。










そして、見えたのは、碧の姿。


「お嬢になにしてくれてんじゃ、ゴルァ!!」


彼はこの現状……わたしの上に覆いかぶさっている健くんを見て、大きな声を出した。