隠さないで生きてきたなんて。


え?
ってことは、もしかして……クラスの人もそのことを知っていたってこと?
この男が暴走族の総長をやっているとわかったうえで、みんなあんなに仲良くしてたの!?


……すごい。
わたしは、ヤクザの娘だと知られたらすぐにまわりから人がいなくなったのに。

いったいどうやってみんなと仲良くなったんだ。


「だから俺には弱みなんてないんだよ。茉白ちゃん、どうする?」


ぐいっと顎を持ち上げられて、無理やり目を合わせられる。


……だめだ。
弱みを握られているのはわたしだけ。
これではどうしようもない。


「こ、これで……どうか、黙っていてもらえませんか」


わたしは自分のポケットの中へと手を入れて、小さながま口財布を取り出した。
そして、それを差し出す。


そのお財布の中には、ここ数ヶ月貯めていたお小遣いが入っている。


平穏な高校生活のため。
これくらいの犠牲は……仕方ないか。


「金はいらないよ」


差し出したものは受け取られることなく。
しゅるりとはずされたのは、セーラー服のスカーフ。