暴走族の人が、わたしがヤクザの娘であることを知っている……それは、数年前あったことだった。


あれは、県外の夏祭りに碧と行った帰りのこと。
いかにも暴走族に所属している特攻服を着た人に、『あれ、鷹樹組の娘じゃね!?』と大きな声で言われ、指をさされた。


自分が住んでいる県内では、わたしがヤクザの娘ということは有名だったから、嫌な目で見られたりすることは多々あるけれど。
県外でそんなことを言われたのはその日がはじめてだった。


その後は県外へ行く時も充分に警戒をしていたが、わたしがヤクザの娘だと県外でバレることもそうそうなく。


……完璧に油断した。
暴走族の総長がいる、と碧から聞いた時点で、もしかしたらその人はわたしがヤクザの娘であることを知っているかも……と警戒すべきだったのに。


この男は、わたしがヤクザの娘だと絶対に気づいた。
……しかも、今言おうとしたよね!?
教室内で!!