あの男との席はできるだけ遠いほうがいい。
ヤクザの娘のわたしが言うのもアレだけど、あの男は危険人物。
急に頬にキスしてくるんだから……。
できることなら関わりたくない!
どこだ!どこ!?
猿渡健一郎の座席は!
必死に探せば、急に。
「健ちゃんの席はあそこだよ」
1人の女の子が指をさした。
指をさしたのは、なんと……わたしの右隣の席。
え?
隣の、席?
思えば、わたしの右隣の席の人は入学式からずっと欠席だった。
欠席だった、けど。
隣の席が猿渡健一郎だったの!?
座席表をちゃんと確認しておくべきだった。
確認しても、どうしようもないけど……!!
「あれ?あの子……」
猿渡健一郎を見ていれば、バチッと合う視線。
わたしはすぐに視線を逸らして、下を向いた。
……お願い、お願いします、神様。
わたしは平穏な学校生活を送りたいです。
どうか、どうか……変に絡まれませんようにっ!!
近づいてくる足音。
わたしは心の中で強く祈った。