その人はわたしのクラスの人なんだよね!?
あんな派手な髪色の人、クラスにいたっけ!?
ぜんぜん記憶にない。
「あいつ、うちのお嬢になんてことを……。お嬢の餅ほっぺは俺のなのに、平気でキスしやがって……。
思い出すだけでも腹立たしい。今すぐこの世から消し去ってやりたい」
ぽつりぽつりと低い声でつぶやく碧。
気のせいか、また殺気が出ているような。
“お嬢の餅ほっぺは俺の”ってなに……!?
わたしのほっぺは、碧のでもないよ……!?
「とにかく、あいつには近づかないでください。話しかけられても絶対に無視してくださいね。
俺もよく見ておきますが、ちがうクラスではずっと監視できないので……万が一、またなにかされたら授業中でもいいので俺に連絡してください。
俺があいつを消しますから」
碧はそう言うと拳を強く握る。
消しますから、なんて恐ろしいことを……。
ヤクザが言うと全く冗談に聞こえない。
「気をつける!だから、碧はできるだけ大人しくしてて!目立つ行動は絶対にだめ!ヤクザのことがどこでバレるかわからないんだから!」
よーく言い聞かせるように言うわたし。
これはとても大切なことだから覚えておいてほしい。
「……善処します」
「つかみかかったり、暴力は絶対だめだからね!」
「……はい」
小さな返事。
碧ならなにをするかわからないから、本当にわたしが気をつけないと……。