…………。
……また……。
思い出してしまった……。
……松尾……。
松尾が。
結婚して。
五年も経つのに……。
高校を卒業してから十五年。
それと同じ年数。
松尾の姿を見かけたことがない。
ばったり会う。
そんなこともない。
その十五年は。
長かったのか短かったのか。
よくわからない。
けれど……。
松尾のことは……。
今でも。
昨日のことのように……。
「店長?」
……‼
思い出したくない。
そんなことが頭の中でグルグルと回っていると。
アルバイトの政輝亜南くんに声をかけられた。
「どうしたんですか。
なんか疲れてるみたいですけど」
……疲れている。
自覚はなかったけれど。
そうなのかもしれない。
心の疲れ。
身体の疲れ。
両方のときはもちろんのこと。
どちらかだけのときも。
思い出してしまう。
「ありがとう、政輝くん。大丈夫」
心配かけたくないから。
政輝くんにそう言った。
「それならいいんですけど……
無理しないでくださいね」
政輝くんは。
よく気付いて気遣ってくれる。
前にも。
政輝くんに声をかけられて疲れているのだと気付いたことがあった。
私自身よりも。
政輝くんの方が私のことを把握しているみたい。
「本当にありがとう」
そんな政輝くんにもう一度『ありがとう』と言った。
政輝くんは。
私よりも一回り年下。
今年、大学四年生。
髪は明るめ、瞳は濃いめのブラウン。
目も鼻も口も絵に描いたように整っている。
そんな政輝くんが羨まし過ぎて。
ため息が出てしまいそう。
実際に政輝くん目当てでカフェに来るお客様がいるくらい。
そんなカフェで私は働いている。
このカフェは両親が経営している。
私がいるところは二号店。
一応、店長。
本店は三歳年下の弟、遥陽が店長として働いている。