次の日の放課後。


 学校を出て家に帰る途中。


 ……‼


「遥稀……」


 そのとき。

 松尾が……。


 松尾は「話があるんだ」と言った。

 その表情(かお)は。
 いつになく真剣。


 松尾の様子に。
 戸惑った。


 松尾は「昨日は悪かったな。気を遣わせてしまって」と申し訳なさそうにそう言って、香原さんと一緒に帰ったことを話した。

 そのあと松尾は香原さんのことを元カノだと話した。

 知っている。
 松尾が言わなくても。
 香原さんは。
 松尾の元カノだということは。
 二人は有名だから。


 松尾は元カノの香原さんに『やり直したい』と言われたらしい。

 だけど松尾は即答しなかった、と。

 松尾はあることに気付いた。
 香原さんと付き合ってから。

 それは……。

 松尾は……。
 私のことが……。
 好……き……。
 ということに……。

 松尾から気持ちを聞いて。
 すごく驚いた。

 松尾が……。
 まさか……。
 私のことを……。
 好……き……。
 だなんて……。

 だけど……。
 それと同時に……。
 ……嬉しい……。
 という気持ちが……。
 芽生えていた……。


 だけど……。
「遥稀の気持ちが聞きたい」
 そう言われたとき……。

 ……素直に……なれなかった……。

 いつもの悪い癖が……。

 本当の気持ちとは違う。
 逆の気持ちを。
 言ってしまった……。
「何とも想ってない」と……。

 それからこんなことも。
「香原さんへの返事を保留にして私の気持ちを訊かないで」と。


 遅い。
 後悔したって。

 口に出してしまった言葉は。
 取り消すことなんて。
 できない。


「……悪かったな……」
 私の返答を聞いて。
 松尾は力なくそう言った。


 違う。
 本当は違うのに。

 それに。
 松尾が謝る必要なんて全くない。


 松尾の辛そうな表情(かお)を見ていると。
 胸が張り裂ける思いがした。