「なんとなくわかっていました。
 遥稀さんの心の中には想っている人がいるということを。
 それでも、ほんの少しの可能性にかけて遥稀さんに想いを伝えました。
 だから遥稀さんは全く気にしなくて大丈夫です」


 亜南くん……。


「あっ、松尾さんに伝えておいてください。
 遥稀さんと松尾さんが付き合っていること、伝えなくていいですって。
 たぶん松尾さんは誠意としてそうする気がして」


 すごい、亜南くん。
 当たっている。


「だけど俺としては二度もそんな報告は聞きたくないですから」


 報告……といっても。
 私の口からは全くといっていいほど伝えていない。

 亜南くんが察して私の代わりに言ってくれたから。


 亜南くん……。
 本当は辛いはずなのに。
 私が自分のことを責めないように気丈に振る舞ってくれている。


「遥稀さん」


「うん?」


「絶対に幸せになってください」


 亜南くん……。


「ただ」


 ただ……?


「俺もこのまま黙っていません。
 俺と付き合わなかったこと、
 後悔するくらいイイ男になってみせます」


 イイ男だよ。
 亜南くんは。
 十分に。

 見た目だけではなく。
 内面も。
 とても魅力的だよ。


 亜南くんは本当に気遣いができる素敵な男性。

 そのおかげで救われたこともあった。

 今も。
 その気遣いのおかげで救われた。


 亜南くん、本当にありがとう。

 亜南くんには感謝してもしきれない。


 亜南くんにも絶対に幸せになってほしい。



 そう願いながら、亜南くんと帰り道を一緒に歩いた。