* * *


 仕事が終わって。

 亜南くんと公園の中を歩いている。


 亜南くんに仕事が終わったら時間があるかと訊いたら『あります』と返答してくれた。

 場所は公園でということになり、今に至る。


「……あの……亜南くん……。
 今日、時間を作ってもらったのは……」


「すみません、
 俺、話したいことがあるんですけど、先にいいですか」


 勇気を出して話そうとしたとき。
 亜南くんが話し始めた。


「……う……うん。
 亜南くんが話したいことって……?」


 ひとまず亜南くんの話を聞こう。


「俺、今月いっぱいで辞めさせてもらいたくて。
 これ、退職願です」


 えっ⁉


「どっ……どうしたのっ、急に⁉
 何かあったの⁉」


 あまりにも突然のことで。
 そう訊くのが精一杯だった。


「何もないです。
 親の仕事の都合です」


「親御さんの……?」


「はい。
 親は会社を経営していて、
 俺も経営のことを学べと言われているんです」


 そうだったんだ。

 亜南くんの親御さんは会社経営を。


「それで空いている時間は経営のことを学ぶことに」


 そうなんだ。


「そうなんだね。
 寂しくなるけど、そういうことが理由なら……」


 そう言って亜南くんから退職願を受け取った。


「だから。
 俺、遥稀さんのこと……諦めます」


 …………。


 え……?

 今、なんて……。