「……真鳳(まほ)……」


 ……やっぱり……?

 この子……松尾の……元カノの……。


 確か名字は香原(かはら)さん……。


 って。

 私、ここにいてはいけないのでは。


「私、ちょっと急ぐからこれで」


 そう思った私は、そそくさとその場から立ち去った。


「遥稀‼」


 私の名前を呼ぶ松尾の声がはっきりと聞こえた。
 けれど一度も振り向かずに走り続けた。


 一体何をやっているのだろう。
 そう思いながら。


 ……辛い、やっぱり。
 松尾と香原さんのツーショットを見ていると。

 別れているからとはいえ。
 

 ……今。
 二人は何を話しているのだろう……。


 ……ダメだな……。

 松尾と香原さんのことを考えると。
 胸が張り裂けそうになる。



 ……疲れた。
 歩こう。



 ……あぁ。
 折れそう。
 気持ちが。

 でも。
 歩き続けなくては。


 そう思いながら家へ向かって歩き続けた。