「……うそ」


 ほら。
 こうやって。
 バレてしまっている。


「……噓……じゃないよ」


 それでも。
 強引に隠し切ろうとしている自分がいる。


「なんで、そんなにも隠そうとするの」


 けれど。
 無理かもしれない。
 隠し切ること。


「隠そうとしてないよ」


 ここまでくると。
 かなりの意地っ張り。


 だけど。
 どうしても。
 隠し通そうとしてしまう。


 ……だって……。
 ……恥ずかしいから……。

 松尾に本当の気持ちを知られることが……。


「なんで遥稀がそこまで隠そうとしているのか、わからないけど、
 そんなにも意地を張っていると……」


 松尾……?


 って……。

 ……⁉


 一瞬。
 何が起こっているのか。
 わからなかった。


 わかったときには……。

 ……キス……されていて……。


 始めは軽く触れるくらい。

 それが。
 だんだんと……舌が上唇と下唇の間を上手く入り込んでくる。

 激しく深く……そして甘い。

 あまりの甘さに。
 身も心も。
 とろけてしまいそう。


 そんなとき。
 松尾の右手が。
 私の左耳をやさしく撫でるから。


「……耳、感じやすいんだ」


 反応してしまった。

 そんな私に気付いた、松尾。
 そのとき、やさしく唇を離し、私の右耳に甘い声のトーンでそう囁いた。


 松尾の甘い声が。
 耳から全身に広がり。
 震えるくらいの快感が押し寄せる。


「反応、かわいい。
 それから声も」


 無意識のうちに漏れてしまった、いつもとは違う声。
 それを松尾は聞き逃さなかった。


 松尾に聞かれてしまった。
 そのことが、ものすごく恥ずかしい。