「どうしたの?」


 どうしたの、って。

 なぜ松尾はそんなにも冷静でいられるのっ⁉


 女性である私を部屋に入れること。


 って。

 あっ……。
 もしかして。
 松尾は私のことを女性として見ていない、とか?

 だから、こんなにも簡単に言える?
 部屋に入ってということ。


 そう考えると。
 なんだか複雑……。



 だけど。
 松尾がそう思っているのだとすれば。
 そんなにも難しく考える必要はないのかな。
 松尾の部屋に入ること。


 そう思いながら「おじゃまします」と言って松尾の部屋に入った。


 リビングに入り。
 松尾が「適当に座って」とソファーの方を示した。

 私は「ありがとう」と言ってソファーに座った。


『少し散らかっている』
 松尾はそう言っていたけれど。
 そんなことは全くない。

 とてもきれいに片付いている。


「飲み物、何がいい?
 と言っても、コーヒーか紅茶、酎ハイくらいしかないけど」


 松尾がそう訊いてくれて。
「紅茶で」と返答した。

 松尾は「オッケー」と笑顔で言った。


 少しして。
 松尾は紅茶を持ってきてくれた。

 テーブルに置かれた紅茶を見つめながら「ありがとう」と言った。

 そのあと隣にもう一つ置かれた飲み物を見た。

 松尾はコーヒーを飲むみたい。


「これもどうぞ」
 松尾はそう言ってお菓子も用意してくれた。

 もう一度「ありがとう」と言う。


 それから「いただきます」と言って紅茶を一口飲む。

 飲んだ瞬間、「美味しい」と自然に言葉が出た。

 その言葉に松尾は「そう言ってもらえて嬉しい」と笑顔で言った。


 松尾の笑顔。

 その笑顔を見て。
 少しだけドキッとした。