って。

 そうか。

 迷うことはなかったんだ。

 松尾は『部屋に寄ってほしい』と言っただけ。
『部屋に入ってほしい』とは言っていない。

 だから部屋の前で待って、そこで受け取ればいいんだ。


 ……危なかったぁ。
『おじゃまします』と言って部屋に入ろうとしたら。
 恥をかくところだった。

 よかったぁ。
 すぐに気付いて。



 そう思っている間に。
 車は駐車場に。


 どうやら着いたらしい。


 車から降りた、私と松尾。

 そこからすぐのところにマンションが。

 十五階建てで。
 松尾が住んでいるのは七階の五号室。


 部屋の前に着き。


「私、ここで待ってるから」


 玄関のドアを開けた松尾にそう言った。


「なんで?」


 え?

 なんで、って。


「だって松尾、私に渡したいものを取りに来たんでしょ?」


「あぁ……
 それ、少し時間がかかるから中に入って待ってて」


「え……」


 えぇっ⁉


 なっ……中でっ⁉

 今、中でって言ったぁぁっっっ⁉


 どっ……どどどっっ、どうしようっっ‼

 いっ……一体どうすれば……っっ。
 どうすればいいのぉぉっっっ‼


「さっ、どうぞ。
 少し散らかっているけど」


 ……‼


 どうぞ、って言っているぅぅっっっ‼


 心の中で大慌てしている私とは違い。
 落ち着いた感じの松尾。


「遠慮しないで」


 遠慮ではなく。
 躊躇しているんですけどっ‼