(side 聖志)



 遥稀と偶然、本屋で会った翌日。



 今、あるところへ向かっている。

 それは。
 遥稀がやっているカフェ。


 あの日。
 合コンで偶然、遥稀と会ったとき。
 そして途中で遥稀と一緒に抜け出したとき。
 そのときに行ったバーで『今度、遥稀の店に行く』と言った。


 そして今日、やっと行くことができる。


 ただ。
 タイミングが。
 少しだけ気になる。

 昨日、遥稀にマンガを貸して。
 その翌日だから。

 店に行くこと。
 そのことがマンガを返してほしい請求だと思われないか。

 そんなつもりは全くないのだけど。

 たまたま今日、都合がついたというだけで。


 今から行く。
 そのことは遥稀には伝えていない。

 遥稀のことを驚かせたくて。

 遥稀の驚く表情(かお)
 想像しただけなのに。
 ニヤリとしてしまった。

 一人でそんな表情(かお)
 それを誰かに見られたら、怪しい人に思われてしまう。


「あっ、あそこだな」


 そう思いながら歩いていると。
 店が見えてきた。


「ここか、遥稀の店」


 外から見たイメージは。
 花や植物が多く、ガーデンをイメージする。

 中に入ると。
 表と同じで花や植物が多く、癒される空間になっている。
 テーブルや椅子も木でできている。

 すごく素敵でおしゃれな店だなと思った。


「いらっしゃいませ」


 若い男性の店員さんが水とおしぼりを持ってきた。


 そのとき。

 気のせいだろうか。

 その店員さんが俺のことを見て。
 驚いた表情(かお)をしたような。
 そんな気がした。