「……奥さんは……
 知ってるの……?」


「え……?」


「……松尾が合コンに参加したということ」


「……?」


「……だって、松尾……
 ……結婚……してるんでしょ」


 それなのに。

『連れ出したくなった』
『一緒に行きたい』

 どうして。
 そんなことを言うの……?



 私の言葉に。
 少しだけ驚いた様子をみせた、松尾。


「……離婚した。
 二年前」


 けれど。
 すぐに真剣な表情になった。



 松尾が……。
 離婚……?

 松尾の言葉を聞いて。
 驚きなのか、なんなのか。
 よくわからないものが。
 頭の中や心の中でグルグルと回っていた。


「今日はまだ大丈夫なんだろ?」


「……うん……」


「じゃあ、行こう」


 松尾の話の切り替えが早過ぎて。
 つられるように『うん』と返事をしてしまった。


 そして松尾が歩く方へ、ついていくように歩いて。

 松尾が言っていた店に着いた。

 そこは、おしゃれで落ち着いた感じのバー。


 こういう店には、ほとんど来たことがない。

 ……だからかな。

 なんだか。
 緊張する。


 カウンター席に。
 松尾と並んで座る。


 ……隣にいる。
 松尾が……。

 そのことが。
 なんだか……。


 不思議。
 十五年前までの私は。
 松尾と接することが恥ずかしくて。
 素直になることができなかった。

 でも。
 今は。
 素直とまではいかないけれど。
 なんとか松尾と接することができている。


 十五年――。

 この年月が。
 変えてくれたのだろうか。