「あっ、ごめん。
 ずっと引っ張ったまま歩いてしまって
 つい夢中になって……」


 そのとき。
 松尾はハッとしたように。
 握っている私の手から手を離した。


 そのすぐ後。
 松尾は私の方に振り向いた。

 松尾の顔が。
 はっきりと見える。

 外は。
 だいぶ暗くなってきている。

 けれど。
 街中に存在する灯り。
 それらの光に包まれているから。

 きっと。
 見えている。
 私の顔も。
 松尾に。

 そう思うと。
 なんだか。
 恥ずかしい。

 だから。
 早く。
 逸らしたい。
 松尾の顔から。

 それなのに。
 なぜだろう。
 そう思えば思うほど。
 逸らすことができない。

 まるで。
 見えない力に引き寄せられているみたいに。



「十五年ぶりに遥稀と会えたから
 連れ出したくなった」


 そんなとき。
 松尾が恥ずかしくなるようなことを言ったから。
 どうすればいいのかわからなくなった。


 ……って。

 あれ……?

 そういえば……。

 松尾……。

 なんで。
 合コンに参加していたの?


「確かこの辺りにおしゃれな店があったはず。
 遥稀と一緒に行きたい」


 松尾……。


 なんで。
 なんで、そんなこと……。


 だって。
 だって、松尾は……。