「お菓子を我慢した三カ月間は地獄のような日々でした。もう好きなだけ食べて、まるまると太っても妃教育の先生方に怒られないのですわね」

 夢のような環境に目をとろんとさせるキャロル。
 そんな彼女をにこにこと見つめながら、レオンも紅茶を口にする。

「俺はころんと太ったキャロルも可愛いと思うよ。気にせずに食べて良かったのに」
「式典用のドレスは、一年前に作りはじめておりましたから。サイズが合わなくなったら大変だということで、運動と節制につとめてまいりましたの。重しを付けた靴を履いてお散歩とか、晩餐は三口までとか、失敗したら敷地内を三週とか、大変でしたのよ」

 キャロルの妃教育に当たった教師陣はスパルタだった。
 おかげで痩身を維持できていたが、あまりの辛さに逃げ出したいと思った回数は、二度や三度ではきかないぐらいある。