木箱の影で着替えたキャロルは、意気揚々と人前に出た。

「いかがでしょう?」

 レースがふんだんに使われた夜会ドレスに、羽根がついたドレスハットを被ったキャロルは、咲く花のように可憐だった。首回りのアクセサリーと手にした扇が品良くコーディネートをまとめて、高見えしている。

 これで社交場に出たら時代遅れだと不興を買ってしまうが、むさ苦しい労働者ばかりの港では、思わず膝をつきたくなるくらい立派なご令嬢である。

「こりゃあすごい。まるでお姫様だ。お嬢ちゃん、本当はやんごとなき家柄の令嬢なんじゃないのかい?」
「んなわけないだろ。行くよ!」