「あんた可愛いねえ。これは、国内じゃ売れなくてイリリアに持って行く古着なんだが、どうせ二束三文で買いたたかれる品だ。あんたにやるよ」
「まあ、うれしい。お代が必要な際には、シザーリオ公爵家にお問い合わせくださいませ」

「こっちには羽根つきの帽子があるよ。航海のあいだ貸してやるから、イリリア国についたら宣伝してくれないかい。口髭商人が売っている帽子は素晴らしいってな!」
「それまで生きているか分かりませんが、かしこまりました」

「こっちの扇もたのむ」
「ガラス製のアクセサリーはいるかい?」

 あちらこちらから声をかけられて、キャロルの手には、あっという間にドレス一式が積み上がった。

「ちょいと、おじさんたち。悪いけど、この子にこんな豪華な服は似合わないよ」
「お待ちください、お姉様。似合うように着こなしてみせますわ。わたくし、これでも着こなしには自信がありますの」