労働者は、けげんな眼差しでニナを見た。
 ニナはお転婆な妹に手を焼く姉の表情で、肩をすくめる。

「海に手を浸して水遊びでもって話していただけさ」

 さすがの名演技。キャロルが誘拐されてきたとは気づいてもらえなかった。
 労働者は麻縄でしばった荷物を解いて、刺繍のはいった女性用の布靴を取り出す。

「そうかい、そうかい。でも、そんなサイズの合ってない靴じゃ、船のうえで遊ぶのは大変だぜ。これをやるから履き替えな」
「ありがとうございます」

 さっそく履き替えると、刺繍靴はキャロルの足にぴったりだった。
 嬉しくて大喜びする様を見ていた別の商人が、古びたデザインのドレスを木箱から取り出す。