根気よく見つめ続けていたキャロルは、はっとした。
 浮かんださまざまな数字のなかに、一つだけ異様な数がある。

「お待ちください!」

 パトリックを引っ張って脇門をくぐったキャロルは、いく人もの商人たちを追い越す。うす暗い路地裏に入ったところで、ようやく持ち主に追いついた。

 腕にバスケットを引っ掛け、ゆったりしたローブを身にまとった、果物売りの女だ。

「どこに行かれるのですか、占い師のニナ様」
「……アンタは、王太子の……」

 驚愕するニナの頭には、『0』の文字が浮かんでいる。
 こんな珍しい数字の持ち主は他にいない。
 だから、美しい顔を布でおおって、商人に紛れていても彼女だと分かった。