休憩をお願いした、ちょうどそのとき、パトリックの足は止まった。

 場所は、城の勝手口につながっている脇門の近くだ。開け閉てしやすい小さな城門で、城内に入る奉公人や商人はこちらを通る。

「ここに、何がありますの?」

 キャロルは、となりにしゃがんでパトリックの視線を追う。
 黒い目が見つめる先には、荷を届けて城を出る商人の一団がいた。
 軽くなった荷車や麻袋をかついで、これから一杯どうだいと会話しながら、楽しげに門を出ていく。

 エイルティーク王国の市民は、みんな心優しく愛情深いため、頭上に浮かんでいる数字も多めだ。
 少なめの数字は、商人が連れてきた手伝いの少年のものである。

(何のへんてつもない、日常の光景ですけれど……)