お利口にも、壁にかかっていたリードをくわえて、出入り口まで持ってきてくれる。
 キャロルは、リードを受け取って首輪に引っかけた。

「お城の宝物庫に泥棒さんが入ったのです。泥棒さんは、たくさんの宝石のなかで、女王ヴァイオラが使っていた品だけを盗み出したそうですわ。これもその一つです」

 キャロルは、自分の指にはまった指輪を見せた。
 パトリックは、鼻をクンクンと動かして匂いを嗅ぐ。

「これと同じ宝石を持っている人を探していただきたいの。できるかしら?」

 キャン! と元気に鳴いて、パトリックは犬小屋を飛び出した。
 愛犬家の会合に行くときみたいな勢いに、懸命についていく。
 手入れが行き届いた庭を抜け、薔薇園を見て回り、騎士団の稽古場を走り……。

「ぱ、パトリック、わたくし、息が切れましたわっ!」