夕焼けが空を赤く染める中、俺は目指す場所に到着していた。

 学校と家の中間ほどにある小高い丘の上にある公園で、夜になると眼下に広がる町並みが綺麗な絶景スポットである。

 まあ、そのおかげで夜はカップルが多くて色々と大変な場所らしい。

 そんなに広くない公園を進み、美咲がいるだろうと思われる場所へ一直線に目指していく。


「……美咲」

 案の定、そこには探していた人物もいた。

 ベンチに座り、目の前に広がる町並みを眺めていた美咲は、いきなり名前を呼ばれた事に驚いて慌てた様子で振り返った。

 小さく「あっ」と声を上げて少し涙目になっている美咲の顔は強張っていたが、俺だと分かるとすぐに表情を緩ませて目元を拭ってはにかんでいた。

「何してんだ、美咲」
「……何も」

 酷く落ち込んだ声で俯いた美咲はそれっきり何も喋ろうとはせず、ただ時間だけが流れていく。これもいつもの事で俺は美咲の隣に腰掛けて話し掛けてくるのを待っていた。

 美咲は今日みたいに子犬を見つけた日は、こうして一人になって自分を落ち着けようとする。連れて帰っても飼えない苦しみをどこにぶつけていいのか分からないのだろう。