「二色くんモテるねぇ」

「そりゃあアオちゃん、あの二色くんだよ? 纏う空気がきらきらしてるよ毎日」

「恋那はもうフィルターかかってるでしょそれは」

「フィルターなくても二色くんはかっこいいんだってば……」


ひそひそとそんな会話をしながら、わたしとアオちゃんの存在は二色くんからは木の影に隠れて見えていないと思って、そこそこ身を乗り出して聞き耳を立てていた、わけなんだけど。



「ごめんなさい。好きとか、俺はないです」

「好きな人とか、いるの…?」

「それはいませんけど、ごめんなさい」

「じゃあ、お試しで付き合ってみるとかでも……っ!」

「ごめんなさい」



ごめんなさい3連発でミスコン経験者の美人先輩をぶった切る二色くんに、わたしもアオちゃんも絶句。


美人先輩も返す言葉がないどころか泣く暇もないみたいで、「あ、そ、そっか? わかった……」と自分に何が起きたのかよくわからないままその場を後にしていた。