綺春くんに手を引かれるままにやって来た観覧車。

キャストのお姉さんがにこにこ笑顔で手を振られて送り出された密室は、高くて、時々不安定に揺れて、結構怖かった。



わたしの脳内では、夕暮れ時の絶景を眺めて、

「綺麗だね」
「木嶋さんの方が綺麗だよ」
「もう、……綺春くんのばか」


……的な感じのやりとりをしたかったのに!



お化け屋敷よりよっぽど怖いんじゃないかと思う。

綺春くんとせっかくのふたりきりを堪能したかったのに……こんなの予想外。景色を楽しむ余裕なんかあるはずもない。


「ひぇ、ま、待って揺れ、」

「大丈夫だから」

「落ちたらどうしよう〜……!」


今この観覧車の中心がポキって折れて全壊しちゃったら とか、わたしたちが乗っている部分だけ突然落下しちゃったら とか。

悪い方向にばかり妄想が進んで足がすくむ。