「い、いいの……?」
「良いも何も、行きたいんでしょ?」
「行きたいけど、でも、」
「でも、なに?」
「わたしのわがままに付き合わせてるんじゃ───…っ」
言葉を遮って、手を取られる。それから強く握りしめられて、右手が綺春くんの温度に包まれた。
こんなの、予想できるわけがない。
心拍数が一気に上がって、ドキドキが致死量に到達しそうだ。
「おれも結構わがままだからね」
「きは、」
「……ふたりになりたいとか、思うし」
綺春くんはずるい。ずるいよ、ずるい。
もうそれしか考えられないくらい、頭のなかは綺春くんのことでいっぱいになってしまう。
繋がれた手を強く握り返す。
緊張で顔は上げられなかった。
「……わたしも、ふたりきりがいい……っ」
消えそうなくらい小さくて震える声でそう返すと、ふ、とやさしく笑う声がした。