なず菜さんと別れたあと、わたしたちはもう一度校舎へと戻っていた。


行き先はもちろん、いつもの図書室。

やっぱりわたしたちのほかに誰もいなくて。


窓から差しこむ光のなかに、微細な埃がきらきらと浮かんでいる。


ここにくるのも、ふたりきりになるのもひさしぶりで。

言いたいことはいっぱいあるのに、この無言を打ち破るのには勇気がいった。




「……ほんとは」


先に口をひらいたのは堂くんだった。



「ほんとは、もっと優しくしたかった。あいつが絡むと……どうしても、自分の行動にセーブが効かない」


さっきも、と堂くんは呟いたことで、

“あいつ”とは棗くんのことを言っているのだと悟った。



「わたし、なつめくんとはなにもない。わたしが好きなのは、なつめくんじゃない」

「……知ってる。つーか、さっきやっと知った」



わたしも、という言葉は声にならなかった。


堂くんの好きな人がなず菜さんじゃない、ってこと。



わたしだって……さっき知ったばっかり。