なず菜さんは涙に濡れた顔をあげて、わたしへと視線を向けてきた。
「安藤さん」
「は、はい」
「“堂家の長男”は、たぶん、重いよ。かなり嫉妬深いよ。それでもいいわけ」
語尾に兄妹で通ずるものを感じながらも、わたしはこくりとうなずいた。
「堂くんが重いのは、なんとなくわかってました」
そこかよ、となず菜さんがはじめてすこし笑った。
隣からも、そこかよ、と突っ込みが入り。
わたしも自分で言っておいて、そこかぁ、としみじみ思った。
繋いだままの手にすこしだけ力をこめる。
重くても、軽くても。
たとえ形や体温が変わってしまっても。
触れてしまえば変わらないわたしと同じ手だった。
「そんな堂くんだから、いいんです」