「っ、なん、で……」


離してくれたとき、わたしは息も絶え絶えで。

堂くんが支えてくれないと真っ直ぐ立てないほど、腰が腑抜けていた。


くたりとしたわたしを支える堂くんが、ふっと眼差しを緩める。



「そろそろ慣れろって」

「んな、慣れるもなにも……毎回、いきなりだし」

「いきなりじゃなかったらいいわけ?」

「そういうことじゃなくてね……!?」


思わずいつもみたいに会話をしてしまったけど。

はっと彼女さんのほうを見ると、彼女は血相を変えてこちらを睨みつけていた。



「……なんでその子なの」


むりやり押し出したような声は怒りで震えている。



「なんで……その子、恭くんになにかしてあげれた?なにか特別なこと、してあげられたの?」

「特別なことってなんだよ」

「っ、恭くんの過去のこと、話したり……」

「いいや、なんにも?」