「こいつ、借りていい?」


堂くんが見つめていたのはわたし、ではなく棗くん。

それでも手だけは、しっかりと握られていて。



「いいけど、また貸しつくよ。今度はイチじゃ済まないかもね」


貸し?

なんのことだろう。



おどけるように振る舞っていた棗くんだったけど、ふいに表情を変えた。


わたしのほうからは見えない堂くんの顔を一瞥している。

そしてちいさく笑ってみせた。





「……どーぞ」



そのあとわたしのほうを向いた棗くんは、まるで送り出すような笑顔を浮かべてくれた。



「みくるちゃん。ちゃんと話し合ってきな」

「え、でも……っ」


話し合うことなんて、もう。

堂くんにはないはずなのに……と。


返そうとしたとき、堂くんがわたしの手を引いた。



そのまま校舎のほうへと進んでいくから、わたしはついて行くしかない。



頭がいまにも爆発しそうだった。


どうして。話し合うって、なにを。

なにから考えたらいいのかわからない。



というか、こんなところ彼女さんに見られたら……っ