でも、それもやめなくちゃいけない。
変えていかなくちゃいけないんだと自分に言い聞かせる。
目頭が熱くなってきて、ずず、と鼻をすすった。
何度かそれを繰り返したあと、泣いてると勘違いされそうだな、と誤解を解くように顔をあげた。
「えへへ。寒いねぇ、今日」
「みくるちゃん、ほんとに寒そうだよ。最近ずっと」
痛々しい顔。
そんな顔、しないで。
「ほら、これあげるからさ」
棗くんはわたしよりもずっと、わたしの気持ちをわかってくれる。
些細な隠し事もこの人の前じゃ丸裸だ、なんて。
そんなことを思いながら、差し出されたカイロをじっと見つめる。
「……じゃあ、お言葉に甘えて」
ゆっくりと棗くんのほうに手を伸ばした
────そのときだった。
「みくる」
伸ばした手を、横から奪うようにぎゅっと攫われる。
わたしの手を握ったのは。
その、氷のようにつめたい手の持ち主は。
さっきまで正門にいたはずの堂くんだった。