見つからなければすぐに帰ってくるつもりだったし、家を出てきたのは、自分自身の頭を整理したかったこともある。


吐く息が白く、そして細長く宙に消えていった。



俺はいま、誰の手を握ろうとしているのか。



あの男も、遼花も、そしてみくるも。


結局、みんな離れていってしまった。

もう誰の手も握らないほうがいいのかもしれない。自分のためにも、相手のためにも。


お前みたいに俺も吹っ切れたほうが楽なのかもしれない、と。一向に見つからない姿を遠くに探す。





『も、やだっ……くるしい』




強く握りすぎたのだ。

あのときと同じことにならないように、つよく強く。


あいつには他に好きな男がいるのに。

みっともなく、引き留めようとした結果がこれだ。


……自業自得。バカみてぇ。





「恭くん」

「お前……なんでここに」


歓楽街を一周したとき、後ろから声をかけられた。

振りかえると、そこにはなず()が立っていた。



「こんな夜にひとりで来んなよ」


走ってきたのか、寒がっている様子はない。

なず菜は赤い顔でじっとこちらを見つめていた。



「大丈夫だよ」

「なにが」

「なずが、いてあげるから」

「はぁ?」