「で、どうなの?質問に答えて」

「えっと……そう、だと思います」


すぱっとしたナイフのような口調に、女性にしてはすこし低めのテノール。

可憐で華奢な見た目とのギャップにわたしはどぎまぎしながら答えた。



「好きなわけ?」

「え?」

「恭くんのこと、好きなんでしょ」

「っ、!」


なんでわかったんだろう。


自分があれだけ時間をかけて自覚したことを、こうもあっさり言い当てられるなんて。


びっくりして言葉も紡げないでいると、女の子が冷静に指摘してきた。



「きみ、わかりやすい。顔に思いっきり出てる」

「ええ……」


あわてて顔をおおったけど、いまさら隠したってもう遅いだろう。

手の甲でふれた頬は、すこし熱を帯びつつあった。



「なんて名前?」

「安藤です」

「そう……安藤さん、もういいよ」


どういう意味かわからなくて、首をかしげる。

女の子は冷ややかな視線をこちらに向けていた。




「安藤さんじゃ、恭くんとつり合わないって言ってるの」



その一言はわたしの胸に深く刺さった。