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「ちょっと、きみ」

「はい?」


呼び止められたのは、駅をすこし過ぎた辺りだった。


家まで送るという堂くんに悪いからと押し切り、駅前で別れていたわたしはひとりきり。


ちょっと低めの声に、おもわず身構えながら振りかえったときだった。




────あっ、と。

もうすこしで声が出そうになった。



そこに立っていたのは、文化祭の日、堂くんと歩いていた女の子だったから。


近くで見るとよりいっそう綺麗さが際立っていた。


か、顔小さい……!



「きみ、恭くんの知り合い?」


羨望の視線には慣れているらしい。

気にも止めない様子で、女の子がそう言った。



「キョウくん……?」

「恭花。さっきまで一緒にいたでしょ」

「あ、堂くんのこと……」


そういえば下の名前、恭花っていうんだよね。


きょうか──綺麗な名前だと思う。