ページをめくる音だけが静寂に落ちる。




『カムパネルラ、また僕たち二人きりになったねえ、どこまでもどこまでも一緒に行こう。僕はもうあのさそりのようにほんとうのみんなの幸のためなら僕のからだなんか百ぺんやいてもかまわない』

『うん。僕だってそうだ』

『けれどもほんとうのさいわいは一体なんだろう』

『僕わからない』




このお話のなかでたびたび登場する、“ほんとうのさいわい”

ほんとうのさいわい、つまり、本当の幸せ。


銀河鉄道に乗って一緒に旅をするジョバンニとカムパネルラが本当の幸せを探していく物語がわたしは昔から好きだった。


みんなそれぞれ幸せに感じることはちがう。

星の数だけ人がいれば、幸せの形だって星の数ほどあるんだ。


自分の幸せ、だれかの幸せ。

それを考えるのがわたしは好きだった。