疑問形でもなんでもない、その問いかけに。

わたしは素直にうなずいた。



「うん。いるよ」


するとなぜか、堂くんの瞳孔にぐっと力が入った。


怒っているような、不機嫌なような。それでいて無表情。



迷惑……なのかな。

そりゃあ体温さえあれば、わたしの心なんていらない……よね。


自分で言い聞かせるようにしながら、ずきずき痛む心をひた隠す。




堂くんがわたしを抱き寄せるようにした。


触れた部分から伝わってくる低い体温。

柔らかな洗剤の香りに包まれて、ああもうと思う。




「近いよ」



心臓の音が耳元で聞こえる。


心をぜんぶ持っていかれそうになって、

そっちばかりに気を取られていたのかもしれない。





「……遠い」




小さく、ちいさく落とされたその声を。

わたしは拾うことができなかった。