「佳奈、待ってよー!」
「遥香、はやくはやく!!」
「同じクラスだからってテンション上がりすぎだよ〜!」

二〇一八年 四月。
中学校の入学式だった。
昇降口で見たクラス割当表の「三組」のところに私と親友の名前があった。
同じクラスになれたのが本当に嬉しくて私は軽い足どりで、ステップを踏むように、勢いよく教室に向かっていた。

ふと肩がぶつかった。

「ごめん!」
優しくて柔らかい声と、色素が薄い肌、眉毛、睫毛、目をした上品な顔とが目と耳に一気に飛び込んできて言葉も出なかった。
「ごめんね!怪我ない?」
「だ、大丈夫...」
「よかった。ここで会うってことは同じクラスか。一年間よろしく!」
「よ、よろしく!」
「じゃ、またあとで。」
そう言うと彼は教室の入口から離れていった。
あまりのかっこよさに「大丈夫」と「よろしく」しか言えなかった。名前だけでも聞けばよかった。
「佳奈?!大丈夫?!なんなのあいつ〜。入学早々私の大事な佳奈にぶつかるなんて!ありえない!」
遥香は相変わらずお節介だ。
「大丈夫だよ、遥香。」