亮輔の必死の訴えにも梨緒からは何も応答がない。
亮輔がもう一度モニターを確認する。
そこには確かに空を覆い隠す宇宙船。
「、、、。」
「、、、騙されたのか、、、。」
亮輔が落胆する。
「気付かなかったの?」
その梨緒の問い。それにふと感じた違和感を思い出す。
それは野球の後、、、。
「俺たちは梨緒の叫び声で校舎に向かったんだ、、、。」
そこで見つけたのは瓦礫の下敷きになる梨緒の姿。
いや、叫び声が何故、梨緒だと分かった?
下敷きになっているのが何故、梨緒だと分かった?
『梨緒さんが、、、梨緒さんが、、、』
それを導いたのは女神の声。
「その時は動転していて気付かなかった。」
姿は見えていない。マネキンのような腕が出てるのみ。
何か目印になるようなものもない。
「何故、女神は梨緒と気付いたのか、、、。」
違和感、、、。さらには、、、

梨緒が木材の下敷きになる少し前。
野球の最後のマウンドで亮輔は確かに聞いていた。
『2人とも〜〜!!やめなさ〜〜い!!』
梨緒の声。
梨緒がもしあの場で木材の下敷きになったのであれば
H型の校舎の間に居たはず。
そこからではグラウンドは見えない。
2人を確認出来ない。
しかし梨緒は2人の事を呼んでいる。
つまりは、、、
梨緒は言う。
「私はグラウンドにいたの!」



「いや〜しかし、一時はどうなる事かと思いました〜。」
宇宙人の一人が調子よさげに仕事をそっちのけで女神に言う。
「あの亮輔とか言う少年が『野球でお互い"投げる"、"打つ"で2勝!勝った方が勝利にしよう。』とか言い出した時は!しかし女神様の機転が素晴らしかった!」
ゴマをするように両手を擦りながら物欲しそうに女神に訴えかける。
女神は自慢げにドヤ顔を見せ、鼻高々に語りだした。
「わらわも『このまま終わってしまっては』と審判をやりながら考えておったわ。」
「そこへノコノコやって来たのがあの娘じゃ。」
その時、グラウンドの向こうから向かってくる梨緒の姿。
「わらわの脳裏で悪魔がささやいたわ。」


「そう!私は探し回ってやっとの思いで2人を見つけた。」
『2人とも〜〜!やめなさ〜〜い!!』
「駆け寄っている時、アンパイアーに女神がいる事に気付いた!」
そこで梨緒は立ち止まる。
「『何であの人が、、、?』そう思った瞬間だった!」
梨緒の目の前の景色が一変した。
「気付けば校舎。そして、、、」
梨緒が頭上の影に気付く。
「頭上から木材が降り注いだ。」



「野球の打球のタイミングを見計らって木材を降り注ぐ。」
「あたかも事故であるかのように、、、。」
女神が悪魔のような微笑みを浮かべる。
「おおお〜〜!!」
一瞬背すじが凍るような寒気が襲う。それと同時に
味方としてこれ程頼りになる事はない。
と、宇宙人一同が素晴らしい機転を褒め称える。