ガラガラ、、、
一気に雰囲気の変貌した部屋。その一角。
いつのまにか爆風で吹き飛ばされた身体に覆い隠すかのように乗っかった瓦礫を払いのけ
立ち込める煙でゴホゴホと咽せながら
ムクッと身体を上げる亮輔。
辺りは白く濁り視界が殆どない。
ただ分かるのは
ドカーーーン!
音と共に部屋が一部吹き飛んだかと思うと
爆風が襲いかかり、瓦礫と煙が更に濃度を増す。
手当たり次第に破壊される建物。
次はいつこちらが壊されるかも分からない。
吹き飛んだ空間から自分がそこに居たらどうなっていたか
容易に想像が出来る。
鉄やコンクリートすら破壊するバズーカ。
直撃したら確実に木っ端微塵。
近くで爆発に巻き込まれただけで無事では済まないだろう。
桁違いの威力に
「とりあえず逃げなければ、、、」
這うように立ち上がり今爆発した場所から遠ざかるように
走り出した。

「おら〜〜!!」
ドーーーン!!
バズーカの爆音と祐介の声がシンクロするように施設に響き渡る。
目標からはモクモクと煙が立ち込め、破片が勢いよく飛び散る。
あからさまに部屋は原型を無くしていく。
しかし、それでも気持ちは晴れるはずもない。
肩と腿から血が流れ落ちる。
あいつもわしと同じように血を流したか!!?
わし以上に傷を負った姿を見んと収まらん!!
流れる血をお構いなしに全身を使ってバズーカを打ち続ける。
狂気を感じさせる程、無茶苦茶にがむしゃらに。
その立ちぼる煙から亮輔が姿を現す。
「見つけたぞ〜〜!!」
重たいバズーカの銃口を持ち上げるように左腕で上げると
マサカリを下ろすように振り下ろし照準を合わせる。
バズーカの照準に遠くちいさい亮輔が入る。
「グチャグチャに飛び散りやがれ!!」
思いっきり感情と力を込めて引き金を引く。
ドーーーン!!
撃った弾はウネウネと軌道を変えながら
まるで意識を持ったかのように逃げる亮輔を追う。

亮輔が振り返る。
すると弾が自分の方に迫ってきているのが分かる。
「うわああああ!」
声を上げて走る。
しかしどんどん距離は縮まる。
顔を赤らめ全力を出す。
すぐ後ろには弾。
と、空いた出口から次の空間へ。
背後の弾も出口を抜けようとして
出口の側面の壁にかすり
ドカーーーン!!
爆発。
辛くも直撃を免れた。
が、爆風で投げ出されるように吹き飛ばされる亮輔。
そのまま目の前の階段に叩きつけられ
勢いでゴロゴロ階段から転げ落ちる。
階段を下まで転げ落ちる頃には全身を強く打っていた。
身体全体が意識が飛びそうに痛い。
なんで俺がこんな目に、、、。
亮輔は今まで祐介を狙って攻撃はするも、
腕を撃ったり、パイプを撃ったり、腿を撃ち抜いたり。
それは祐介の攻撃を止める為だった。
動きを止める為だった。
しかし、今、祐介は腕を撃ち抜いても攻撃をしてくる。
腿を撃ち抜いても進んでくる。
亮輔の頭に女神の事が浮かぶ。
「思う存分戦いなさい。」
この言葉は一見、気の済むまで自由に戦っていいと言う言葉。
しかし、同時にそれはお互い気が済まなければこの戦いは終わらない事を意味する。
亮輔は祐介が戦闘不能になればこの戦いは終わると思っていた。
武器が扱えなくなる。歩けなくなる。
しかし、その考えは甘かった。
祐介はもう痛みも感じず迫ってくる。
しかも祐介の目的は、、、
拳銃でもマシンガンでもバズーカでも確実に仕留める!
命を狙って来た事で必然と分かる。
「、、、、!」
亮輔は一つの答えに達した。

祐介が堂々と1階で繋がる大きな入口から第3の施設に侵入する。
今までと違い、柱なども少ないだだっ広い倉庫のような空間。
しかしどこでも関係ない。
ブランと下げて持っていたバズーカを
フン!と肩に担ぎ、
ドーーーン!!
ドーーーン!!
手当たり次第に乱発する。

ドカーーーン!!
ドカーーーン!!
爆発音が五月蝿いくらいに施設内にこだまする。

「りょうすけ〜〜〜!!出て来いや〜!!」
その遠吠えにも似た叫びに呼応するかのように
シュー
シュー
破壊した壁の鉄パイプから、ところかしこに蒸気が吹き出す。

亮輔は影に隠れていた。
辺りは爆発音と破裂音。怒号が飛び交う。
そんな中、気配を消すようにひっそりと隠れる。
破片や爆風が襲う。
しかし、微動だにしない。

狂気に狂う祐介。
破壊と狂気の境地。
ドーーーン!
ドーーーン!
もう誰にも止められない。

ドキドキと心臓が高鳴る。
相手に聞こえるのではないか?
不安になるほど。緊張で額に流れる汗ですら
音をださないようにひっそり流れる。
「バズーカ砲。」
「その破壊力と射程距離は他の兵器と比べて群を抜いて高い。」
亮輔は息を潜めながら来たるときに向け構える。
「しかし、、、」
のしのしという足音とドーーーン!という発射音が
徐々に近づく。

祐介は
ドーーーン!
ドーーーン!
バズーカを鳴らしながらも
ジリジリと真っ直ぐ前進する。

「その弱点は破壊力があるが故に取らなければならない間合い。」
バズーカの弾丸の爆発的な破壊力は、もし近くにいれば大ダメージ。それは当然祐介本人にも当てはまる。
だからこそ、遠くの物を破壊するのに適している。
かと言って、バズカーカの間合いの内側。
狂うような様相の祐介は到底近くに寄れば危険を伴うだろう。
だからこそ!!
その歩く祐介のすぐ横。
壁の影になっている部分に身を細め、
同化するように存在を殺していた亮輔。
気付かず目の前を通過したのを見計らい。
ダッ!と、飛びかかり、
祐介を背後から両肩を腕でガッチリ羽交い締めにする。
「長い銃口はその懐にスキを与える!」

「が〜〜〜!」
亮輔の羽交い締めに祐介は掴んでいた引き金を離してしまい
右肩に乗せて固定していたバズーカは
その重みで
ドシッと床に落ちる。

祐介が力いっぱい羽交い締めした身体の中で
身体を思い切り揺らしながら暴れる。
亮輔の服には祐介の両肩から出た血が徐々に滲んでくる。

「離せや!りょうすけ!!」
祐介の掌が羽交い締めした亮輔の腕をがっちり掴み
引き剥がそうと引っ張る。

その力の強さに思わず腕を解きそうになりながら
亮輔は「う〜!」と、踏ん張るような声を出し
なんとか耐える。
離したら終わり。剥がしたら勝ち。
それはお互い理解していた。
しかし、力ではどうしても祐介には勝てない。
亮輔は羽交い締めにしたままで
右の掌に握っている"それ"を祐介の首に突き立てた。

《『バズーカ』→『うつ』=『注射』》

注射。円筒型の筒(シリンジ)に薬物を注入し、
可動式の押子(プランジャ)で生物の体内に注入する事。





プスッ
祐介の首に注射器の針が突き刺さる。
「え!?」
思わず祐介の動きが停止する。
そこには人を死に至らしめる毒薬。

「死ね!祐介!!」
亮輔は注射器のプランジャをグッと押し込む。

「が〜〜!!」
祐介がそれに対抗するように力いっぱい暴れる。

亮輔の腕は祐介の何度も引き剥がそうとした掌の力で
ミミズ腫れのように腫れあがる。
しかし、亮輔は離さない。
そのまま最後までグッとプランジャを押し込む。

「が、、、。」
今まで叫んでいた祐介が急に黙り込み、
糸が切れた人形のようにその場にドサッと崩れ落ちた。