「女神様!報告です!侵入者2名!捕獲に成功しました!」
しばらくして女神に報告が入る。
やはり、イタチの最後っ屁。能力がない中での最後の足掻きだったであろう。
女神が抱えていた最後の不安が消え、安心する。
「ここに連れてまいれ!」
同時に未だ確認していない姿に、ホントに奴らだったのか。それが気になる。


カランカラン! 
滑車付きの牢屋が女神のいるコックピットの自動ドアを
ウィーン
と開け、くぐった。


カランカラン!
自動ドアを開け、兵士が滑車付きの牢屋を引いてくる。
「!!」
女神が確かに牢の中にいる2人を確認した。
「やあ!女神。久しぶりだね。」
亮輔があぐらをかき、不敵に笑いながら人差し指と中指だけを真っ直ぐ立て、額に当てると、
「よっ!」と、言うかのように女神にサインを送り
挨拶をかます。
「離せや!出せや!」
その横で暴れていたからか亮輔よりも厳重に手も足も錠で繋がらた祐介が
イモムシのようにくねくね蠢きながら騒いでいる。
「、、、。」
確かに"あの"2人だった。
やっぱり、、、と、思う反面、
当初の計画では陥るはずではなかったこの状況に
女神は苦笑いしか出来なかった。 
それを察したように亮輔が言葉を発する。
「どうだ?ここまでやられた感想は??」
不敵な笑みは変わらず勝ち誇ったように言われた言葉に
「ハン!」と、女神は見下すように鼻で笑い
挑発的な笑みで答えた。
「まさかこんな事をしでかすとは思わなんだわ!能力を逆手に取るなんてのう!」
両者の間で火花のようなものが散り、緊張感が走る。
亮輔もその女神の言葉に「ハン!」というように返す。
「そもそも女神!あんたのこの計画は穴だらけだ!」
それに祐介がウネウネしながらチャチャをいれる。
「そうじゃ!言ったれ!亮輔!」
亮輔が腕を組んで語り出す。
「まずは"戦い"。"勝負のつけ方"。相手の好きな競技を好きなだけやらせる。それは逆を言えば満足したら終わり。いつ終わるかも分からない戦い。あんたの計画は"工場まで運ぶ"だったはずだ。その前に満足したら?逆にいきなり逆上して相手を殺してしまったら?」
祐介が便乗して後ろから
「バーカ!バーカ!」
と、ヤジを飛ばす。
その態度にイラッとしながら女神が反論する。
「そうですね。しかし実際、徐々にエスカレートしていき、"工場"の機械を破壊出来ました。」
苛立ちながらも平然を装い、余裕の表情、笑顔を見せつける。
しかし、動じることなく亮輔も余裕の表情でまだ付け入る。
「確かに実際、俺らはまんまとあんたの計画どおり動いてしまった。しかし運もあったはずだ。あともう一つ。"工場の破壊"。これが出来なければこの"地球侵略"というのは成し得なかっただろう。しかしその方法が事故というのを利用したもの。これも穴だ。それは不確実な事で、例えば事故と見せかけて機械を破壊するにしても、自然を装うのであれば、工場のその場所に足を運ばなければそれは成立しなかった。」

亮輔に反論される度に余裕の女神の額に
血管が1つ、2つと浮き出る。
「そうじゃな。でも逆を言えば、いつでも"機械"は破壊できた。しかしそうしなかったのは、より自然を装う為。警戒させない為、、、。」
その女神の言葉に、さらに釘を指すように亮輔が被せる。
「そして何より、人間が能力を使って変化する様、苦しむ様が見たかったんだろ?楽しむ為のその行為!それがお前の計画の最大の穴だ!!」
女神の表情がついに強ばる。亮輔が追い打ちをかけるように言葉を重ねる。
「"能力の譲渡"。これがあんたの計画の中心だ。」
「あんたの能力はこうだ。①イメージしたものを出現させれる。②場所まで飛ばせる。これはあんたがその都度コスプレをしていた事、『場所を用意した』というフレーズにも合致する。」
女神が常に自分の思っているような格好をしていた事で
女神自身に①イメージしたものを出現させる能力がある事、
銃撃戦の前に『場所を用意した』と女神が発した直前にしか場所が変わらなかった事で、②場所まで移動させれる能力がある事、が証明される。
「しかし、その能力をただ使うだけではあんたの言うように不自然極まりない。だから相手が思った事をさせる必要がある。そこで③能力の譲渡。」
自分たちが自分たちで思ったものを出現させれるのは銃撃戦、飛行戦闘でも分かるように。
「相手に"能力を譲渡"する事で相手も能力が使えるようになる。それに合わせて自分も"ものを出現させる"。そうするとあたかもその空間そのものが相手が望んだ空間になったかのように錯覚する。」
「つまり、こんな3つの能力を重ねる事で魔法のような神がかった力を顕現できる。」
「しかし、この"能力の譲渡"というのは危険もはらんでいる。もしかしたらいきなり殺し合うかも、武器として自分に危害を加えられるかも分からない。だからあんたはあえて縛りをつけた。」
「『前の人の言葉の連想』と。本来勝手に使えるはずの能力に縛りをつけることで、ある程度能力の範囲が絞られる。さらに、例題として"バレー"や"卓球"などを出す事によってスポーツなどから始めは軽いものになるように仕向けた。これで段階的に上がっていく算段が立てれる。能力のみならず言葉も巧みに考えられているよ。」
「、、、。」
女神は目を細め、口をへの字にして無言のまま亮輔を睨みつける。
「しかし、、、相手が何を考えているか分からない言。さらには"能力を譲渡する"危険をあえて、算段を立ててまで、あんたが楽しみたいが為に与えてしまった。何をしても大丈夫な能力を与えてしまった。それが今回のような相手に反撃のチャンスまで与えてしまい、結果!
多くを失う事になったんだ!」
亮輔が煽るように言い捨てる。
背後では祐介の「バーカ!バーカ!」
それについに女神の怒りが心頭!ついに本性を表す。
「何が言いたい!!何がしたい!!?」
今まで作っていたような"女神"の声とは裏腹のドスの効いた低い声。
お!と少し驚いた表情を見せる亮輔。
これが本性か!と思い、女神が向ける鋭い眼光に負けない位の強い眼光で女神に対抗する。
「、、、。」
無言の睨み合い。
怒り心頭の女神に対し、亮輔には少し余裕も伺える。
「、、、。」
なぜ奴はこんなに余裕でいられるんじゃ?牢に入れられ、
敵に囲まれて、間もなく街は破壊されるというのに、、、
そこで、ふと女神が先程の亮輔の推理を思い出す。
実は亮輔の推理には間違いがあった。
"イメージしたものを出現される能力"、"場所まで飛ばせる能力".そして"能力の譲渡"。
それを合わせて神がかった能力を顕現。
さらには『相手が何を考えているか分からない』。
それらは亮輔や祐介の考えた事を"読んだ"のではなく
"被せた"。
つまりは女神は"心を読めた"訳ではない!
そう言わんばかりの推理。
「ハハン!」
女神が、分かったぞ!というかのように微笑む。
亮輔の余裕には裏がある。
まだ、何か計画を隠している。
そして、それはお前には読めるはずがない。
そんな余裕なんだと。
女神がゆっくり目を閉じる。
「!!」
亮輔がその行動に「なんだ?」と疑うように見つめる。
「、、、なるほどのう。」  
女神がニヤッと笑う。
「『バーカ!バーカ!もっとヤジを飛ばすんじゃ』。」
「!!」
驚いた祐介がヤジを止める。目をつむったままの女神が更に続ける。
「どれどれ、、、次は、、、『女神を挑発するんだ』
『もう少しだ!』。」
「なるほどのう、、、。」 
女神が再びゆっくり目を開く。
その表情は先程とはうって変わって余裕な表情だ。
「!!」
亮輔もその女神の言葉の真意に気付く。
女神は心が読めた。
「何か狙っておるのう、、、時間稼ぎといったところか、、、それで余裕を決め込んでいたわけじゃな。」
そんな女神に一人の宇宙人が耳打ちをする。
女神が一度その宇宙人と目を合わせる内容を確認すると、
もう一度亮輔たちの方を見て、さらなる笑顔を見せる。
「そんなそなたらに悪い知らせじゃ。」
それは勝利を確信した笑顔。
「どうやら準備が出来たようじゃ。そなたらは時間を稼いで街への攻撃を遅らせる算段だったじゃろうが、それもここまでじゃ。」
そして、女神が右手を高らかに上げ、コックピット全体に響き渡るように号令を出した。
「攻撃!準備!!」
「!!」
亮輔と祐介が何も言えず無言でバタバタ暴れる。
「あともう一つ。」
女神がさらに亮輔たちの計画の確信をつく。
「『挑発して飛ばされて助かる』算段なんじゃろ?」
亮輔はギグっとする。
「確かに五月蠅いハエどもじゃ!望み通り飛ばしてやろう!」
 

そう女神が言った瞬間、亮輔たちの目の前の光景が変わった。
周りに牢屋はない。手や足に錠もない。そこは見慣れたグラウンド。
そして真上には、、、女神の母船。


「街もろとも消してくれるわ!!」
女神が高らかに上げた腕を振り下ろした。
「撃て!!!」


亮輔達の真上の母船の中心に緑の光がグーーーーンと集まる。
あと宇宙船の光のレーザー。
それも今度は超特大だ。
母船が集まった光で眩しく緑色に光る。
「来る!!」
亮輔達はそのまま、
身動きが取れないまま
眩しい光を遮るように目を隠しながらその場でしゃがみこんだ。
ドーーーン! 
辺りを大きな爆発音が包む。