宇宙人はレーザーを発射してすぐ
亮輔たちのマシンガンの弾が届く前にすぐ真下へ移動。
少し上部に被弾するも辛くも躱して切っていた。
その場の浮遊からの上下左右の移動。
飛行性能の差が歴然となる。
モクモクと亮輔の戦闘機のあげる煙。
その前後にはちょうど光の境界線の光と闇。
その環境は亮輔たちには都合が良かった。
煙と光の明暗の目くらまし。その裏で、
戦闘機が爆炎を上げた刹那。亮輔は次のフォームにチェンジしすぐにエンジンを停止させていた。
推進力を失った戦闘機は墜落するように真下に落下する。
《『F−15 (イーグル)』→『戦闘機』=『零式艦上戦闘機』》
「うお〜!落ちる〜!」
祐介が騒ぐ。
相手はまだ煙と明暗に意識を囚われる。
そして、エンジンをもう一度付けた時、、、
上空には宇宙人の機体の下部が見えた。
「これまでの飛行戦闘をして気付いた事がある。」
亮輔は戦闘機の向きを宇宙人の機体をしっかり捉えれる方へ傾ける。
「宇宙人の機体はその場で浮遊を可能とする事で上下左右自由に移動できる。しかし、、、」
P−40(ウォーフォーク)の時を思い出す。
「その場で躱せるが故に基本、機体の上下が変わらない。」
地球の戦闘機が機体の軸を中心にクルクル回転しながら飛行するのに対し、
宇宙人の機体はその場で浮遊して上下左右に移動する。
いわば地球で言うヘリコプターのような動きに近い。
「だからこそ、上部、下部から狙えば狙える面積が大きい。」
確かにウォーフォークや飛燕の時、上部からの狙い撃ち。これが圧倒的に撃破率が高かった。それは撃破してる側が一番理解していた。
それは飛行機の構造上、音速で飛ぶ飛行機は空気抵抗の問題で正面から見ると薄っぺらい作りをしている。
しかし、上部や下部から見ると、飛行を翼やプロペラの分だけ大きく見える。
「そして、下部はほぼ死角。」
相手の後ろが駄目なら下から。
しかもこれまでの戦闘の経験値から宇宙人の機体は上下からの攻撃に弱いと実証されていた。
「やるのう。亮輔。」
祐介が狙いを定めトリガーを持った。
「性能が劣っている戦闘、であれば相手のどれだけ先を読めるかだな。」
亮輔は祐介がしっかりと狙えるよう、真正面に機体が見えるように傾ける。
「決めろ!祐介!」
外すはずがない程、完璧にしっかりとレーダーに機体を捉え、
「まかせとけや!」
ドーン!ドーン!
ミサイルを発射した。
うっすらと煙が開ける。
「!!」
宇宙人がその中に戦闘機が無い事に気付く。
「どこだ!?」
と、意識した時には既にミサイルは発射されていた。
ピピピピ!
宇宙人の機体のレーダーがミサイルの接近する警戒音を出す。
レーダーによって、上部か下部からミサイルが飛んでくるのが分かる。
問題は上部か?下部か?ソナーのようなレーダーでは把握しきれない。
「左右に移動、、、いや、加速で逃げ切る!」
宇宙人の機体が前方へ加速。
しかし、気付くのが遅れた為、追尾するようなミサイルが宇宙人の機体を追い近づく。
ミサイルがクルッと曲がりながら宇宙人の機体に迫る。
「よし!」
宇宙人の機体にミサイルが接近、、、
「決まったな。」
と、思った、、、
「なに!!?」
亮輔と祐介は声を揃えて言葉にした。
当たった!と思った機体は突如その場から姿を消し、
ミサイルはそのまま何事も無かったかのように通過して行った。
「戦闘では相手のどれだけ先を読めるかだな。」
そうつぶやく宇宙人の機体はすでに亮輔達の戦闘機が遠くに小さく見える距離まで遠のいていた。
"瞬間移動"。女神がステージまで連れていってくれたように
戦いの武器が出現したように、
この宇宙人の機体も当然、瞬間移動の能力を秘めていた。
しかし、それを出さずまともに亮輔達とやり合っていた事。
それは、、、
「さあ、総攻撃だ!」
亮輔の戦闘機の周りにタイミングを見計らって集まってきた宇宙人の機体。
上下左右、前方後方、全て囲まれている。
すべては計算されていた。
一機で挑んできたのも、他の機の動きから気を逸らせるため。
宇宙人が他の機に出した指令はこうだった。
「全機各々地点へ。その後は敵機の動きを追いつつ移動。指示を出したら総攻撃に出る。」
初めから一機で攻めようとは考えていなかった。
この為の布石。
亮輔達はまんまと作戦にハマってしまったのだ。
「撃て!!」
この号令と共に囲んだ宇宙船が一斉に亮輔たちの戦闘機へ向け発泡した。
ビービービービー!
ドカーン!ドカーン!ドカーン!ドカーン!
ひとたまりもなく亮輔たちの戦闘機は何度も爆炎をあげる。
「ヤバいぞ!亮輔!めっちゃ撃たれとる!!」
凄まじい爆発の衝撃と爆音と煙で
コックピットで出来るだけ小さく身体を丸める祐介。
「確かにこれはヤバい!とにかく連想だ!連想だけは絶やさず続けてくれ!!」
焦りと興奮で声を荒げながら、念仏のように思いつく戦闘機をひたすら連呼する亮輔。
祐介も負けないように追うようにひたすら連想を続ける。
「撃て撃て撃て撃て〜〜!!」
なおも宇宙人は号令を止めない。
「奴に回復する暇を与えるな!」
ドカーーンという音と煙。
その合間にピカピカと黄色い光が煙の間から見える。
宇宙人はレーダーを確認する。
まだレーダーには戦闘機が存在が示されている。
「まだだ!緩めるな!」
かつてないほどの煙が辺りに立ち込める。
しかし、宇宙人は集中し、煙の間から見える光。
そしてレーダーを確認し続けた。
「奴の回復力にも限界があるはずだ!」
味方の隣の宇宙船すら見えない程、煙が充満した。
その時、、、、
レーダーからついに亮輔たちの戦闘機の存在が消えた。
「やめ!!」
宇宙人が全機に告ぐ。
一斉に四方八方から降り注いでいた攻撃が止む。
再度煙の中を穴が開くほど凝視する。
煙からパラパラと音を立てながら破片が散り、
遥か下界へ落ちていく。
視界も少しずつだが良好へ向かう。
じっと動向を伺う。
本当に倒したのか、、、?
いつ復活して攻撃してくるかも分からない。
気を抜かず見守る。
この宇宙人がリーダーとなったのは亮輔達を圧倒した飛行技術はもちろん、
人をまとめる"統率能力"、ついて行こうと思わせる"人格"、
そして、、、
この神経質なほどの"慎重さ"。
それは今までの修羅場を潜ってきた経験値とも言える。
危機能力、管理能力全てが揃ったこの宇宙人が率いる飛行部隊は無敵であった。
そんな部隊を相手に一機で挑んで敵うわけがない、、、。
そう物語るように
煙の晴れた空間には空っぽの空しか存在しなかった。
「、、、ハハ、、、。」
宇宙人が込み上げるように笑い出す。
「ハハ、、、ハハハ、、、。」
「勝った!、、、勝ったぞ!!」
冷静沈着なリーダーが取り乱すほど、
喜びがあふれるほど
亮輔達はこの完璧な部隊を苦しめる強敵であった。