トライアングル 下

「何だ!?どうなった!?」
別の宇宙船の宇宙人が爆発した味方の機体を確認する。
しかし周りに敵の機体が存在しない。
「?」
レーダーを確認する。
敵機の印が自機の印と重なっているように見える。
「なんだこれ?」
レーダーがおかしくなったのか?と、指でコンコンつつく。
ピュンピュン!
そんな機内に銃声が鳴り響いた。
「へ?」 
ドカーーン!

「くそ!奴はどこだ!?」
「奴を倒せ!!」
宇宙人の機体同士の通信が騒がしく交錯しだす。
「奴は上下の動きでレーダーを撹乱してくる!目で捉えろ!!」
宇宙船の数機が上空に飛び上がった亮輔たちの戦闘機を
目で捉える。
逆光であるが確かにそこに存在する。
「よし!見つけた!!」
「言っても奴の動きは直線だ!そのまま奴の軌道に狙いを定めて打ち落とせ!!」
宇宙船の数機が一斉に亮輔たちの機体に狙いを定め、
ミサイルを放つ。
ドン!ドン!ドン!ドン!

放たれたミサイルが真っ直ぐ亮輔たちの機体に近づく。

「よし!」
確実に先ほどのように急降下してきている。
直撃は免れない。
、、、そのはずだった。
「なに!!?」
真っ直ぐ急降下してきていた機体がミサイルが当たる直前!
急にヒラヒラと右に回転しながら旋回。
そのまま飛んできたミサイルを優雅に躱してみせた。
「三戦闘機『飛燕』じゃ!」
祐介がトリガーを握って言う。

《『P−40(ウォーフォーク)』→『戦闘機』=『三式戦闘機「飛燕」』》

三式戦闘機「飛燕」、、、機銃を備えた火力
     と飛行性能を備えた戦闘機。
     連合軍の愛称は「トニー」。
     その軽快に飛ぶ姿は
     空を舞う燕のよう。





「『その軽妙俊敏性はあたかも青空を飛ぶ燕のよう』ってか。確かに連合軍にはない軽快さがあるな。」
亮輔が操縦桿を握りながら上下逆さまで言う。
「祐介!やってやれ!!」
祐介がそんな亮輔の後部の座席でニッタリ笑う。
「ハッハッハ!雨のお返しじゃ!!」
カチャッ!
祐介がトリガーを握ると同時に戦闘機に備えられた機関砲から弾丸が降り注いだ。

ドドドドドドドドド!
上空から降り注ぐ機関銃の雨。
「うわっ!」
宇宙人は思わず宇宙船内で雨を避けるように
頭を隠してしまう。
ドカーーン!

ドカーーン!
ドカーーン!
ドカーーン!
次々と宇宙船は爆発と共に墜落していく。
「くそ!このままでは埒が明かない、、、」
それまで遠くで見ていたリーダー格のような型の違う宇宙船に乗った宇宙人がついに痺れを切らす。
そして通信機のボタンで宇宙船全機に指令を出した。
「全機に告ぐ。これから飛行隊を複数の部隊に編成する。現在のポイントAにいる機体を"A"、ポイントGにいる部隊を"G"、ポイントFにいる機体を"F"というように。
それぞれが、これから私の指示どおり動くように。」



「お!?何か散りだしたぞ!」
母船の下に群がるように固まっていた宇宙船達が散り散りに逃げるように母船の下から離れていく。
母船のボディーはがら空き。
たまらず逃げたのか?何か作戦でもあるのか?
しかし、どんな策を練られていようとも亮輔達には
考えている程、余裕は無かった。
散っていった宇宙船を追っていっても仕方ない。
何にしても目的は女神を倒す事。
この母船を落とす事。
それであればこのボディーががら空きの今こそ好機!
「祐介!行くぞ!」
どんな作戦で来るのか?逃げただけならそれで良し。
母船の下の陰にゆっくり入り込む亮輔たち。
周りを警戒しつつ、母船を詮索する。
「俺たちは無敵モードだ。しかしこの大きな母船を撃ち落とすにはどうやっても火力が足りなすぎる。」
亮輔たちの戦闘機は女神の母船と比べると米粒ほどに小さい。
そんな歴然とした差で攻撃した所でダメージはたかが知れているだろう。
もし、無敵モードで復活して攻撃を続けても明らかに撃ち落とすまでの時間は足りない。
さらにこういう戦闘の要になる母線というのは大概
撃ち落とされないように他より装甲が厚くなっているもんだ。
「そこで探らなければいけないのが相手の弱点。」
しかし、それでも宇宙船の出入りやミサイルの発射口など
は基本、船内と繋がっているはず。
亮輔はそれを探していた。
亮輔はこう考える。
「時間の許す限りまず相手の宇宙船を破壊しながらその出入り口やミサイル口を探す。」
「それでも見つからなかった場合、最悪、街を破壊しようとする際は必ず攻撃を仕掛けてくるはずだ。そこを攻撃する。」 
「しかし、それでも母船を落とせなかった場合。町はなくなる、、、。ギリギリを狙うだけリスクは高い。」
「それまでには何とか他の方法を探し出したい。」
急にシリアスになり静まり返る機内。
母船の下を舐めるように2人で見上げる。
スポットライトのような白い丸い光。
所々血管のように走る赤い電飾。
鉄のような鉛のような色の外見。
丸い大きな円盤の下は、SF映画さながらの近未来空間が
広がっている。
明らかに地球より進んだ技術。圧倒的なスケール。
見ているだけでつい息を飲んでしまい、「こんなのに本当に勝てるのか?」
と、弱気にさえなってしまいそうだ。
不安に駆られているとその不安を煽るように
ピピッ!という音が機内を走る。
「!!」
あまりのスケールの大きさに圧倒されていた。
気付けばレーダーの亮輔たちの射程の少し離れた外に、1機敵機が近づいてきている。
すぐにレーダーの印が示す位置を肉眼で目視で確認する。
そこには確かに敵機。しかも堂々と1機のみ。
しかし、先ほどまでの宇宙船とは色も形も違う。
纏う雰囲気は只者ではない。
明らかに存在感が違う。
「中ボスのお出ましってとこかの〜。」
祐介はトリガーをしっかりと握り照準を敵機に合わせる。
「どうやらあいつを倒さないと進めないらしいな。」
亮輔も操縦桿をギュッと握る。
戦闘機のスピードはグッと減速させ、ゆっくりと間合いを測りながら相手の出方を伺う。
まだ相手は静止したまま動かない。
おそらく相手もこちらの動きを探っているに違いない。
操縦桿を握る亮輔の掌には緊張でうっすらと汗が浮かぶ。
チラッとレーダーを見る。
もうすぐこちらの間合いに奴が入る。
相手の間合いがどこまでか分からない。
いつ攻撃が始まるかの緊張感。
祐介もいつでもイケるように機銃のトリガーを常に握る。
目視、レーダーに目を凝らす。
レーダーの敵機の点滅が三重丸で示す円の一番外側の射程に入った。
その瞬間!
「いくぞ〜〜〜!」
最初に仕掛けたのは亮輔達。
操縦桿を前に押し、一気に加速。
「くらえや〜〜!!」
同時に祐介も機関銃をグッとお見舞いした。
ドドドドドド!
機関銃の球を連続で発射し続けながら加速する戦闘機。

それに気付いたのか相手の宇宙船も全力で緑のレーザーを打ち込んでくる。

両者とも濃密な攻撃が相手を襲う。
弾が当たるギリギリまでお互い真正面から攻撃を打ち続ける。
我慢比べのような攻防。
ギリギリまで相手が動くのを待つ。
当たる!当たらない!
「!!」
我慢し切れず亮輔が操縦桿を大きく左へ切った。

「!!」
それとほぼ同時に宇宙人も大きく舵を切った。
交錯するようにスレスレで両者が空中ですれ違う。

「〜〜!!」
亮輔たちの戦闘機に特に異変はない。

「〜〜!!」
宇宙人の機体の羽に、少し弾が当たったのか
小さな1つの穴からピリピリ電気が飛び出る。

「〜〜くそ!!」
亮輔はすでに勝敗が分かっていた。
ドカーーン!
大きな爆炎を上げて散ったのは亮輔達の戦闘機の方。
その勝敗を決したのは、、、。

ドドドドドド、、、
亮輔たちの弾丸が宇宙人の機体を襲う。
ピーピーピー
宇宙人の光線が亮輔たちの戦闘機を襲う。
当たる!当たらない!
お互いがお互いの動きを探っていた。
そして、、、
「!!」
相手が動いた瞬間、同時に操縦桿を切った。
その差が出たのは、、、
お互いの弾が当たる瞬間、、、。
亮輔達の戦闘機は弾に向かい進行方向に進み続け、
宇宙人の機体はその場から真横に避けられた。
機体の性能の差。
地球の飛行機は基本、エンジンの爆発による推進力で
飛んでいる。
その為、真横にへの旋回が不可能である。
しかし、宇宙人の機体ではヘリコプターのように浮いている為、その場で旋回して移動する事が可能な為、
回避能力が断然に優れていた。
「回避能力はあちかが上手か、、、」
亮輔が考え込む。





「、、、。」
亮輔達の戦闘機があげる爆炎を眺めながら宇宙人も考えていた。
まるで"鷹"が獲物を捕らえるような、高速の縦移動に
優雅に空を舞う"燕"のような横移動。
そして、直進で向かってくる勇敢さで自分の機体に損傷を追わせた。
そのバリエーションの多さは驚異であった。
「次はどう来る?」

煙が開ける、、、
そこに堂々と現れたのはF−15(イーグル)。

《『三式戦闘機「飛燕」』→『戦闘機』=『F−15(イーグル)』》

F−15(イーグル)、、、アメリカの力の象徴
     である国鳥「鷲(わし)」の
     名前がつくこの機体は、
     その名にふさわしく、かつて速度、 
     運動性、上昇性、ミサイル性全て
     において最高と言われた戦闘機。
     未だ空中戦における被撃破記録は
     ない。






「負けてなお真っ向勝負とはやるのう!」
祐介が亮輔に言う。
「、、、いや、今回のは最高と言われた機体。性能が違うんだよ。」
真剣な眼差しで相手を睨みつせながら言った。
「それに、、、」
そして、グッと操縦桿は押す。
「ゲーム仕込みの腕には自信があるんだ!」

また向かい合った真正面からの勝負が始まる。
今度は宇宙人も機体を加速し始める。
その場で構えていても次は恐らく対処される。
相手は数多の手を持つ強敵!
そう宇宙人も感じていた。
「回避だけではなく、攻めねば勝てぬ。」

相手との距離が縮まる。
「オラオラオラオラ!」
初めに手を出したのは亮輔たち。
ドドドドドド!
機関銃を連射しながらそのまま相手から逸れるように急上昇。

宇宙人はその機関銃を避けるように下降。
すぐに機体を上に向きなおらせながら相手の位置を確認する。
亮輔達の戦闘機はもう高くまで上昇している。
「また、あの急降下か!させん!」

上昇した亮輔たちはすぐにジェットコースターに乗っているかのように急降下。
内臓が浮き上がるような重力が亮輔達を襲う。
しかし、怯まず尚も操縦桿を下降に向ける。

宇宙人はそれに気付いたかのように上昇。
「そうやすやすと上は取らせん!」
上昇しながらもビー!ビーと、レーザーを放つ。

「飛行戦闘のセオリーは相手の背後を取ること。」
亮輔たちは攻撃を躱しながらも戦闘機の向きを上下変えながら宇宙人の機体の背後に回りこもうとする。

宇宙人も同じように亮輔の戦闘機の後を追う。
お互いがお互いの背後を追う。
お互いが上昇、下降と同じ動きをしている為、
まるで同じ軌道にいる衛星のように
一定の距離を保ったまま同じ孤を描きまわる。
横に旋回。すると相手も横に旋回。
斜めに上昇。すると相手も斜めに上昇。
お互いが相手が視野に入った瞬間に攻撃をする。
<いたちごっこのような鏡の中を相手にしているような攻防。
しかし、それでも気を抜けば相手に背後を取られるのは必至。
どちらが背後を取るか。
技術と駆け引きが周回する。
だんだん今上を向いてるのか、下を向いてるのか、
どちらが空でどちらが地面かさえ分からなくなってくる。
急な上昇や下降によるG。旋回による遠心力で
三半規管がやられていくのがわかる。
感覚や集中力が鈍り、めまいもしだしてきた。
相手はどうであろう?しかし、一つ言えるのは
「このままではヤバい。」
相手が宇宙人である以上、こちらの常識は通じない。
相手はこの状況には慣れている!そう判断した方が妥当。
だとしたら、やる事は、、、
亮輔は急旋回し、相手に背を向けるようにその場を逃げるような離脱した。

もちろん宇宙人はこの好機を逃がす訳がない。
すぐに自分も旋回をすると亮輔達を追うように背後に
ぴったりとつく。

「後ろを取られたぞ!亮輔!!」
後ろを振り返り、迫りくる機体に祐介は慌てながら報告する。

ピーピー
ここぞとばかりに宇宙人はレーザーを放つ。

「来た!緑のビーム来たぞ!」
祐介が焦り亮輔の肩をポンポン叩く。
「分かった!分かった!どっちから来てる!?」
亮輔は速度を加速させながら祐介に問う。
祐介はすぐに確認する。
「右じゃ!右!」
「よし!分かった!」
報告を聞くと、伝わったようで
すぐ左の翼を上に戦闘機を傾ける。
ピーピー
そのすぐ下を間一髪でレーザーが通過する。
「よし!」
すぐに戦闘機を元の水平に戻し保つ。
「祐介!とりあえずこのまま走る!相手の動きを報告してくれ!」
 
ピーピー
宇宙人も亮輔達に追いつこうとレーザーを放ちながら加速をする。
右へ左へ。
レーザーを打ち込むが戦闘機に機体を傾けながら巧みに躱される。

気付けばせっかく中央付近まで攻めていた母船の下から抜け出しそうな所まで追いやられていた。
宇宙人はどこまで追っていくるのか。

宇宙人も母船の端まで来ている事に気付く。
母船の陰になっている部分の境界線のように光が差し込んでいる。
追うべきか、、、追わないべきか、、、
答えは既に出ていた。
「脅威は潰す。」

「まだ来とるぞ!」
祐介が宇宙人がまだ追って来ている事を確認。

始めに亮輔達の戦闘機がその光の境界線に吸い込まれるように消えていく。
それを真後ろからすぐ追う宇宙人の機体。
機体が光の境界線を越える。
「!」
一瞬暗がりからの光で眩しく目がくらむ。
と、その瞬間。
目の前に亮輔達の戦闘機の後部が接近してくる。
「まずい!ぶつかる!」
宇宙人は一気に機体を減速される。
しかし、目が眩んだ事で一瞬の判断が遅れた。
もうすでに減速をしていた亮輔達の戦闘機は
ぶつかる!と思いきや少し上昇をし、
宇宙人の機体の上部スレスレを減速しながら通過していく。
そう!これを狙っていた。
減速した戦闘機は
真っ直ぐ後退し、そして、着いた先は、、、

亮輔の戦闘機の目の前に宇宙人の機体の後部が見えた。
ついに背後を取った!
「もらった!!」
祐介がトリガーを握ろうとした。
「!!」

「させん!」
しかし、宇宙人はその場でバレリーナのようにクルッと旋回して見せた。

「その場で旋回出来るのか!」
<そして両者目の前で機関銃、レーザーの応酬。
ドドドドドド!

ビビビビビ!
タイミングはほぼ同時。しかもこの距離。

ドカーーン!
亮輔達の戦闘機は躱せるはずがなかった。


宇宙人はレーザーを発射してすぐ
亮輔たちのマシンガンの弾が届く前にすぐ真下へ移動。
少し上部に被弾するも辛くも躱して切っていた。
その場の浮遊からの上下左右の移動。
飛行性能の差が歴然となる。
モクモクと亮輔の戦闘機のあげる煙。
その前後にはちょうど光の境界線の光と闇。

その環境は亮輔たちには都合が良かった。
煙と光の明暗の目くらまし。その裏で、
戦闘機が爆炎を上げた刹那。亮輔は次のフォームにチェンジしすぐにエンジンを停止させていた。
推進力を失った戦闘機は墜落するように真下に落下する。

《『F−15 (イーグル)』→『戦闘機』=『零式艦上戦闘機』》




「うお〜!落ちる〜!」
祐介が騒ぐ。

相手はまだ煙と明暗に意識を囚われる。

そして、エンジンをもう一度付けた時、、、
上空には宇宙人の機体の下部が見えた。
「これまでの飛行戦闘をして気付いた事がある。」
亮輔は戦闘機の向きを宇宙人の機体をしっかり捉えれる方へ傾ける。
「宇宙人の機体はその場で浮遊を可能とする事で上下左右自由に移動できる。しかし、、、」
P−40(ウォーフォーク)の時を思い出す。
「その場で躱せるが故に基本、機体の上下が変わらない。」
地球の戦闘機が機体の軸を中心にクルクル回転しながら飛行するのに対し、
宇宙人の機体はその場で浮遊して上下左右に移動する。
いわば地球で言うヘリコプターのような動きに近い。
「だからこそ、上部、下部から狙えば狙える面積が大きい。」
確かにウォーフォークや飛燕の時、上部からの狙い撃ち。これが圧倒的に撃破率が高かった。それは撃破してる側が一番理解していた。
それは飛行機の構造上、音速で飛ぶ飛行機は空気抵抗の問題で正面から見ると薄っぺらい作りをしている。
しかし、上部や下部から見ると、飛行を翼やプロペラの分だけ大きく見える。
「そして、下部はほぼ死角。」
相手の後ろが駄目なら下から。
しかもこれまでの戦闘の経験値から宇宙人の機体は上下からの攻撃に弱いと実証されていた。
「やるのう。亮輔。」
祐介が狙いを定めトリガーを持った。
「性能が劣っている戦闘、であれば相手のどれだけ先を読めるかだな。」
亮輔は祐介がしっかりと狙えるよう、真正面に機体が見えるように傾ける。
「決めろ!祐介!」
外すはずがない程、完璧にしっかりとレーダーに機体を捉え、
「まかせとけや!」
ドーン!ドーン!
ミサイルを発射した。

うっすらと煙が開ける。
「!!」
宇宙人がその中に戦闘機が無い事に気付く。
「どこだ!?」
と、意識した時には既にミサイルは発射されていた。
ピピピピ!
宇宙人の機体のレーダーがミサイルの接近する警戒音を出す。
レーダーによって、上部か下部からミサイルが飛んでくるのが分かる。
問題は上部か?下部か?ソナーのようなレーダーでは把握しきれない。
「左右に移動、、、いや、加速で逃げ切る!」
宇宙人の機体が前方へ加速。
しかし、気付くのが遅れた為、追尾するようなミサイルが宇宙人の機体を追い近づく。

ミサイルがクルッと曲がりながら宇宙人の機体に迫る。
「よし!」
宇宙人の機体にミサイルが接近、、、
「決まったな。」
と、思った、、、
「なに!!?」
亮輔と祐介は声を揃えて言葉にした。
当たった!と思った機体は突如その場から姿を消し、
ミサイルはそのまま何事も無かったかのように通過して行った。

「戦闘では相手のどれだけ先を読めるかだな。」
そうつぶやく宇宙人の機体はすでに亮輔達の戦闘機が遠くに小さく見える距離まで遠のいていた。
"瞬間移動"。女神がステージまで連れていってくれたように
戦いの武器が出現したように、
この宇宙人の機体も当然、瞬間移動の能力を秘めていた。
しかし、それを出さずまともに亮輔達とやり合っていた事。
それは、、、
「さあ、総攻撃だ!」

亮輔の戦闘機の周りにタイミングを見計らって集まってきた宇宙人の機体。
上下左右、前方後方、全て囲まれている。
すべては計算されていた。
一機で挑んできたのも、他の機の動きから気を逸らせるため。

宇宙人が他の機に出した指令はこうだった。
「全機各々地点へ。その後は敵機の動きを追いつつ移動。指示を出したら総攻撃に出る。」
初めから一機で攻めようとは考えていなかった。
この為の布石。
亮輔達はまんまと作戦にハマってしまったのだ。
「撃て!!」
この号令と共に囲んだ宇宙船が一斉に亮輔たちの戦闘機へ向け発泡した。
ビービービービー!
ドカーン!ドカーン!ドカーン!ドカーン!
ひとたまりもなく亮輔たちの戦闘機は何度も爆炎をあげる。

「ヤバいぞ!亮輔!めっちゃ撃たれとる!!」
凄まじい爆発の衝撃と爆音と煙で
コックピットで出来るだけ小さく身体を丸める祐介。
「確かにこれはヤバい!とにかく連想だ!連想だけは絶やさず続けてくれ!!」
焦りと興奮で声を荒げながら、念仏のように思いつく戦闘機をひたすら連呼する亮輔。
祐介も負けないように追うようにひたすら連想を続ける。

「撃て撃て撃て撃て〜〜!!」
なおも宇宙人は号令を止めない。
「奴に回復する暇を与えるな!」
ドカーーンという音と煙。
その合間にピカピカと黄色い光が煙の間から見える。
宇宙人はレーダーを確認する。
まだレーダーには戦闘機が存在が示されている。
「まだだ!緩めるな!」
かつてないほどの煙が辺りに立ち込める。
しかし、宇宙人は集中し、煙の間から見える光。
そしてレーダーを確認し続けた。
「奴の回復力にも限界があるはずだ!」
味方の隣の宇宙船すら見えない程、煙が充満した。
その時、、、、
レーダーからついに亮輔たちの戦闘機の存在が消えた。
「やめ!!」
宇宙人が全機に告ぐ。
一斉に四方八方から降り注いでいた攻撃が止む。
再度煙の中を穴が開くほど凝視する。
煙からパラパラと音を立てながら破片が散り、
遥か下界へ落ちていく。
視界も少しずつだが良好へ向かう。
じっと動向を伺う。
本当に倒したのか、、、?
いつ復活して攻撃してくるかも分からない。
気を抜かず見守る。
この宇宙人がリーダーとなったのは亮輔達を圧倒した飛行技術はもちろん、
人をまとめる"統率能力"、ついて行こうと思わせる"人格"、
そして、、、
この神経質なほどの"慎重さ"。
それは今までの修羅場を潜ってきた経験値とも言える。
危機能力、管理能力全てが揃ったこの宇宙人が率いる飛行部隊は無敵であった。
そんな部隊を相手に一機で挑んで敵うわけがない、、、。
そう物語るように
煙の晴れた空間には空っぽの空しか存在しなかった。
「、、、ハハ、、、。」
宇宙人が込み上げるように笑い出す。
「ハハ、、、ハハハ、、、。」
「勝った!、、、勝ったぞ!!」
冷静沈着なリーダーが取り乱すほど、
喜びがあふれるほど
亮輔達はこの完璧な部隊を苦しめる強敵であった。
モクモクとした煙が晴れた空にポツンと空いた空っぽの空間が
宇宙船の集まる中央に空いている。
その一番外側で陣取るリーダー格の宇宙人の宇宙船から笑い声が響く。
「ハハハハ!、、、勝ったぞ〜!」
それにつられるように、緊張で張り詰めていた宇宙人達にも安堵が漏れる。
「やったのか?!」
「、、、勝った。」
「流石、リーダー」
一手で戦局をひっくり返す。流石といえるリーダーの攻防に宇宙人一同、喜びの歓声をあげる。
このリーダーがいる限り無敵だ。どんな敵が現れようとも怖くない。





「ミスディレクションって知ってるか?」
そんなリーダーの宇宙人の機体の背後に亮輔達の戦闘機。
他の機体の一番外側に陣取って居るだけに誰も気づかない。
「何じゃそりゃ?」
祐介が興味なさそうに答える。
難しい言葉は特にどうでもいいようだ。
何より難しい言いまわさなくても祐介にはこの状況が理解出来ていた。


それは、集中攻撃を受けている最中、、、。
「とりあえず祐介!イメージを湧かせ続けろ!」
その攻撃に耐えるように、しりとりでもするかのように連想を繰り返す亮輔と祐介。
爆発で辺りが煙で覆われる。
その時!一つの連想をした。

《『□□』→『戦闘機』=『F−22(ラプター)』》

F−22(ラプター)、、、鷹や鷲に代表
     される"猛禽類"を意味する名前の
     戦闘機。その鳥類の王ともいえる
     名前の通り、現在、存在する戦闘機   
     の中でズバ抜けた性能を誇る、
     最強の戦闘機。
     しかし、その最強と言われるには
     もう一つ理由がある。それは性能に
     プラスしてある"ステルス性"。 



煙で視界がほとんどなくなる。そこで頼りになるのは視界ではなくレーダー。
レーダーで存在を確認しながら攻撃をするしかない。
しかし、このラプターの"ステルス性"はレーダーに映らない。
レーダーで確認していた宇宙人はレーダーから消えたもののあたかもそこに"いた"かのように認識している。
しかし、その間に煙に紛れて移動していた。
亮輔達の戦闘機のレーダーには宇宙人の機体位置は全部映っている。
それをもとに、慎重に、バレないように。
そして気付いた頃にはそこに亮輔たちの姿はない。
それは意識が、目が、"いた"であろう空間に釘付けになっていたから。
マジシャンが手の中の物を消す意識の盲点を
突いたマジックと同じ。
『ミスディレクション』それは"意識の外"。 



「ハハハハハ!」
勝ちを確信した宇宙人が知る由もなく高笑いする。



そこに全く気付いていない背後から機銃を連続でお見舞いした。
「正直、かなりヤバかったけど。性能でも劣って無かったって言う事だな。」
「お返しじゃ〜〜!!」
ドドドドドド!



ドドドドドド!と、攻撃の衝撃がリーダーの宇宙船の機体に伝わる。
「へ!?」
ドカーーン!
本人すらも訳が分からないまま、
リーダー格の宇宙船は撃沈した。





「女神様!報告です!Z号機がやられました!」
母船の管理室がざわめく。
「なに!?リーダーが!?」
余裕でインターネットの掲示板を眺めていた女神からついに笑みが消える。
リーダーが倒された事。それは一番の頼りを失った事。
レーダーに映る機体が何の決まりもなく散り散りに動き回る。


「化け物だ〜〜〜!!」
母船の下では統率を失った飛行部隊が
逃げるわけでも攻めるわけでもなく
とにかく動き回る。
大混乱。
それ程の出来事だった。


「!?、、、相手はどこにおる!?相打ちにしては状況がおかしいじゃろ!」
女神が痺れを切らしてレーダーの映る管制モニターの前までフワッと飛んで降りてくる。
管制モニターを管理する宇宙人も訳が分からず首を傾げる。
「貸してみろ!」
女神が管制モニターの通信ボタンを押し、マイクを握り呼びかけた。
「飛行部隊!そっちはどうなっておる!応答せよ!!」
ザーザーとノイズ音が走る。そして、一機から連絡が入る。

「、、、女神様!!リーダーがやられました!」
その声は焦りと動揺で揺れている。
「知っておる!まだ敵機は健在なのか!?」
女神が声を荒げて言う。
その横で別のレーダーを見ていたもう一人の管制官が騒ぎ出す。
「女神様!機体A−5、G−4!やられました、、、。」
「!!」
明らかに存在する敵機。
女神の顔にも困惑の色が隠せない。
そこへ通信が入る。
「、、、はい!まだ存在します。いや、存在するのか?
それが、、、レーダーに映らないんです。」
レーダーに映らない機体、、、女神が通信を返す。
「新しい敵機か!!」
管制官からはそんな報告は受けていない。
しかしそう考えるのが妥当だった。
「、、、いえ違います!いや、、、実際違うかどうかも分かりません。」
通信機からは混乱した声が溢れ出るように流れる。
「もう何が何だか、、、。」
「倒しても倒しても蘇る、、、。」
「機体も形も攻撃もどんどん変わる、、、。」
「レーダーにも映らない、、、。」
「居たと思ったら消える、、、。」
「もう、、、姿、形のない化け物としか思えません!」
それを聞いた管制室がざわめく。
「どういう事だ!?」
「倒しても倒しても蘇ってくるだと!?」
「姿形のない化け物?」
「いや、でも実際レーダーにその機体は映っていない!」
得体の知れない敵に、統率者を倒したその脅威に
母船中が震撼した。
しかし、その中で一人だけ口に手を当て、冷静に考え込む女神。
敵は一機、、、?倒しても蘇る、、、?
居たと思ったら消える、、、?
「まさかのう、、、」
女神は一つの仮説にたどりつく。


「よし!とりあえず邪魔な敵機を蹴散らすぞ!」
亮輔がブンブン蝿のように飛ぶ宇宙船の中からめぼしいのを定め、背後を狙ってつく。
「まかせとけや!」
そこへ祐介がミサイル、機関銃と使い分け攻撃をかます。
打って変わって統率の乱れた部隊はいとも簡単に仕留めれる。
しかし、仕留める事が一番ではない。
「おそらくもう時間がない。とにかく周りの邪魔な敵機のみ蹴散らしたらすぐ母船を攻めるぞ!」
もう遊んではいられない。
一番の目的は母船の撃破。一刻も早く母船を撃破しなくては町が危ない。
敵機を倒しながらも母船の下に潜り込み弱点を探る。
その表情は焦りもみせながらもいつになく真剣だ。
「、、、そうでしたか、、、」
そんな2人の脳裏に再びあの聞き覚えのある声がこだました。
「!!」
「女神か!!」
辺りを見渡しても女神らしき姿は見当たらない。
おそらく母船の中からの声。女神の得意な直接脳に伝えてくるテレパシーのようなやつだ。
「やはりそうでしたか、、、」
女神のテレパシー。それはこちらからの声が向こうに届くかは分からない。
しかし、その声を聞いた瞬間、募った思いが祐介の中で爆発した。
「おい!出て来いや!女神!わしらを騙しおって!!」
何もない空間に罵声を浴びせる。
「、、、。」
それに触発されたのか。されてないのか。
聞こえているのか。いないのか。
無言の静けさから、ただ一言だけ返答が返ってきた。
「、、、おいたがすぎましたね。」
ガン!
それと同時に大きな音を立て、いきなり戦闘機の電気系統が全て落ちた。
「!!」
亮輔が操縦桿を前後に動かす。
戦闘機はピクリとも動かない。
操縦席にある目の前のスイッチをつけたり切ったり、
グチャグチャに全部のスイッチをいじってみる。
しかし全く動く気配すらない。
気付いた祐介も機関銃のトリガーを押してみる。
カチャカチャと空回りする音だけで依然なにも効果がない。
「、、、まさか!」
亮輔が一つの事に気付く。
「祐介!連想だ!次の機体の連想をしろ!」
亮輔に言われて慌てて目をつむり、連想をする祐介。
「、、、。」
「、、、。」
「、、、駄目じゃ。」
先程まではすぐに連想した機体にチェンジしていた戦闘機が今回、ウンともスンとも言わない。
「どれだけ考えても変わらん、、、。」
祐介が残念そうに肩を落とす。
「くそ!」
亮輔が思い切り配電盤を叩く。
もちろん全く動く気配はない。
しかし、戦闘機は徐々にだが先程まで動いていた推進力で
母船へ近づいていた。
「、、、。」
亮輔は考えた。
真顔で近づく母船を見つめる。
もう、それしか思い浮かばなかった。
「、、、。」
後ろで祐介は尚もカチャカチャ動かない機関銃のトリガーを押している。
「、、、祐介。仕方ない!」
「、、、なんじゃ?」
祐介のカチャカチャが止まり、前にいる亮輔の背中を見つめる。
「このまま突っ込むぞ!」
その号令で2人はその場で衝撃に備える為、キュッと頭を守るように丸まった。


ドーン!
大きな母線に小さな衝撃が走る。
「女神様!敵機、本艦に衝突したもようです!」
もちろんこれだけ大きな船だ。
たかが小さな戦闘機が衝突した所でそこまでの損害はない。
もうこれで何も出来るはずもない。
しかし、そう思いながらもその小さな脅威がしっかり去ったかどうか。
それだけが女神の中でどこか不安だった。
「敵機撃墜を確認しろ!」


パラパラ、、、。
亮輔たちの戦闘機が突っ込んだ場所には大きな穴が空いていた。
それは母船からしたら戦闘機1個分の小さな穴。
モクモク煙が充満し戦闘機の存在は確認出来るものの2人の安否は分からない。
煙から見える戦闘機の影だけで両翼は折れ、もう飛行は不可能なのが分かる。
いや、まだ分からない!
「、、、。」
相手は化け物。駆けつけた宇宙人が複数人で銃を構え、
警戒しながら戦闘機に近づく。
「、、、。」
ゆっくりゆっくり。
「、、、」
いつ化けてでるかも分からない。
戦闘機も変形するかも、、、
「、、、」
足をするように、ひたり、ひたり、と慎重に。
「、、、」
煙に包まれた戦闘機のコックピットに近づく。

ドドドドドド!
そこへ煙の間を縫うように弾丸が飛び散る。

「!!」
一斉に散るように逃げる宇宙人達。

「ハハハハハハ!死ねや!死ねや!」
煙から出てきたのはマシンガンを持った祐介。
ドドドドドド!


「女神様!奴らの生存を確認!只今銃で応戦中。」
兵隊軍なら女神へ連絡が入る。
「、、、やはりか、、、念には念を用意していたな。」
女神がボソリと呟く。そして軽快に指令を出した。
「船内全兵に告ぐ。侵入者を発見!ただちに全兵総動員で侵入者を捕獲せよ!!」
女神は思う。
「もうこれで大丈夫だろう。これだけの兵の数。」
「頼りだったはずの能力は先程解除してやった。」
「おそらく現在使用している銃などはあらかじめ積んであったものだろう。」
「そうそう長くは持つまい。これだけの兵力を相手に。」
「、、、出来るはずがない!!」



「オラオラオラオラ!」
祐介が機関銃をぶっ放す。
カチャッ!
その横に遅れてショットガンを持った亮輔が参戦する。
「、、、援護に来たぜ!祐介!」
ドーーン!




「女神様!報告です!侵入者2名!捕獲に成功しました!」
しばらくして女神に報告が入る。
やはり、イタチの最後っ屁。能力がない中での最後の足掻きだったであろう。
女神が抱えていた最後の不安が消え、安心する。
「ここに連れてまいれ!」
同時に未だ確認していない姿に、ホントに奴らだったのか。それが気になる。


カランカラン! 
滑車付きの牢屋が女神のいるコックピットの自動ドアを
ウィーン
と開け、くぐった。


カランカラン!
自動ドアを開け、兵士が滑車付きの牢屋を引いてくる。
「!!」
女神が確かに牢の中にいる2人を確認した。
「やあ!女神。久しぶりだね。」
亮輔があぐらをかき、不敵に笑いながら人差し指と中指だけを真っ直ぐ立て、額に当てると、
「よっ!」と、言うかのように女神にサインを送り
挨拶をかます。
「離せや!出せや!」
その横で暴れていたからか亮輔よりも厳重に手も足も錠で繋がらた祐介が
イモムシのようにくねくね蠢きながら騒いでいる。
「、、、。」
確かに"あの"2人だった。
やっぱり、、、と、思う反面、
当初の計画では陥るはずではなかったこの状況に
女神は苦笑いしか出来なかった。 
それを察したように亮輔が言葉を発する。
「どうだ?ここまでやられた感想は??」
不敵な笑みは変わらず勝ち誇ったように言われた言葉に
「ハン!」と、女神は見下すように鼻で笑い
挑発的な笑みで答えた。
「まさかこんな事をしでかすとは思わなんだわ!能力を逆手に取るなんてのう!」
両者の間で火花のようなものが散り、緊張感が走る。
亮輔もその女神の言葉に「ハン!」というように返す。
「そもそも女神!あんたのこの計画は穴だらけだ!」
それに祐介がウネウネしながらチャチャをいれる。
「そうじゃ!言ったれ!亮輔!」
亮輔が腕を組んで語り出す。
「まずは"戦い"。"勝負のつけ方"。相手の好きな競技を好きなだけやらせる。それは逆を言えば満足したら終わり。いつ終わるかも分からない戦い。あんたの計画は"工場まで運ぶ"だったはずだ。その前に満足したら?逆にいきなり逆上して相手を殺してしまったら?」
祐介が便乗して後ろから
「バーカ!バーカ!」
と、ヤジを飛ばす。
その態度にイラッとしながら女神が反論する。
「そうですね。しかし実際、徐々にエスカレートしていき、"工場"の機械を破壊出来ました。」
苛立ちながらも平然を装い、余裕の表情、笑顔を見せつける。
しかし、動じることなく亮輔も余裕の表情でまだ付け入る。
「確かに実際、俺らはまんまとあんたの計画どおり動いてしまった。しかし運もあったはずだ。あともう一つ。"工場の破壊"。これが出来なければこの"地球侵略"というのは成し得なかっただろう。しかしその方法が事故というのを利用したもの。これも穴だ。それは不確実な事で、例えば事故と見せかけて機械を破壊するにしても、自然を装うのであれば、工場のその場所に足を運ばなければそれは成立しなかった。」

亮輔に反論される度に余裕の女神の額に
血管が1つ、2つと浮き出る。
「そうじゃな。でも逆を言えば、いつでも"機械"は破壊できた。しかしそうしなかったのは、より自然を装う為。警戒させない為、、、。」
その女神の言葉に、さらに釘を指すように亮輔が被せる。
「そして何より、人間が能力を使って変化する様、苦しむ様が見たかったんだろ?楽しむ為のその行為!それがお前の計画の最大の穴だ!!」
女神の表情がついに強ばる。亮輔が追い打ちをかけるように言葉を重ねる。
「"能力の譲渡"。これがあんたの計画の中心だ。」
「あんたの能力はこうだ。①イメージしたものを出現させれる。②場所まで飛ばせる。これはあんたがその都度コスプレをしていた事、『場所を用意した』というフレーズにも合致する。」
女神が常に自分の思っているような格好をしていた事で
女神自身に①イメージしたものを出現させる能力がある事、
銃撃戦の前に『場所を用意した』と女神が発した直前にしか場所が変わらなかった事で、②場所まで移動させれる能力がある事、が証明される。
「しかし、その能力をただ使うだけではあんたの言うように不自然極まりない。だから相手が思った事をさせる必要がある。そこで③能力の譲渡。」
自分たちが自分たちで思ったものを出現させれるのは銃撃戦、飛行戦闘でも分かるように。
「相手に"能力を譲渡"する事で相手も能力が使えるようになる。それに合わせて自分も"ものを出現させる"。そうするとあたかもその空間そのものが相手が望んだ空間になったかのように錯覚する。」
「つまり、こんな3つの能力を重ねる事で魔法のような神がかった力を顕現できる。」
「しかし、この"能力の譲渡"というのは危険もはらんでいる。もしかしたらいきなり殺し合うかも、武器として自分に危害を加えられるかも分からない。だからあんたはあえて縛りをつけた。」
「『前の人の言葉の連想』と。本来勝手に使えるはずの能力に縛りをつけることで、ある程度能力の範囲が絞られる。さらに、例題として"バレー"や"卓球"などを出す事によってスポーツなどから始めは軽いものになるように仕向けた。これで段階的に上がっていく算段が立てれる。能力のみならず言葉も巧みに考えられているよ。」
「、、、。」
女神は目を細め、口をへの字にして無言のまま亮輔を睨みつける。
「しかし、、、相手が何を考えているか分からない言。さらには"能力を譲渡する"危険をあえて、算段を立ててまで、あんたが楽しみたいが為に与えてしまった。何をしても大丈夫な能力を与えてしまった。それが今回のような相手に反撃のチャンスまで与えてしまい、結果!
多くを失う事になったんだ!」
亮輔が煽るように言い捨てる。
背後では祐介の「バーカ!バーカ!」
それについに女神の怒りが心頭!ついに本性を表す。
「何が言いたい!!何がしたい!!?」
今まで作っていたような"女神"の声とは裏腹のドスの効いた低い声。
お!と少し驚いた表情を見せる亮輔。
これが本性か!と思い、女神が向ける鋭い眼光に負けない位の強い眼光で女神に対抗する。
「、、、。」
無言の睨み合い。
怒り心頭の女神に対し、亮輔には少し余裕も伺える。
「、、、。」
なぜ奴はこんなに余裕でいられるんじゃ?牢に入れられ、
敵に囲まれて、間もなく街は破壊されるというのに、、、
そこで、ふと女神が先程の亮輔の推理を思い出す。
実は亮輔の推理には間違いがあった。
"イメージしたものを出現される能力"、"場所まで飛ばせる能力".そして"能力の譲渡"。
それを合わせて神がかった能力を顕現。
さらには『相手が何を考えているか分からない』。
それらは亮輔や祐介の考えた事を"読んだ"のではなく
"被せた"。
つまりは女神は"心を読めた"訳ではない!
そう言わんばかりの推理。
「ハハン!」
女神が、分かったぞ!というかのように微笑む。
亮輔の余裕には裏がある。
まだ、何か計画を隠している。
そして、それはお前には読めるはずがない。
そんな余裕なんだと。
女神がゆっくり目を閉じる。
「!!」
亮輔がその行動に「なんだ?」と疑うように見つめる。
「、、、なるほどのう。」  
女神がニヤッと笑う。
「『バーカ!バーカ!もっとヤジを飛ばすんじゃ』。」
「!!」
驚いた祐介がヤジを止める。目をつむったままの女神が更に続ける。
「どれどれ、、、次は、、、『女神を挑発するんだ』
『もう少しだ!』。」
「なるほどのう、、、。」 
女神が再びゆっくり目を開く。
その表情は先程とはうって変わって余裕な表情だ。
「!!」
亮輔もその女神の言葉の真意に気付く。
女神は心が読めた。
「何か狙っておるのう、、、時間稼ぎといったところか、、、それで余裕を決め込んでいたわけじゃな。」
そんな女神に一人の宇宙人が耳打ちをする。
女神が一度その宇宙人と目を合わせる内容を確認すると、
もう一度亮輔たちの方を見て、さらなる笑顔を見せる。
「そんなそなたらに悪い知らせじゃ。」
それは勝利を確信した笑顔。
「どうやら準備が出来たようじゃ。そなたらは時間を稼いで街への攻撃を遅らせる算段だったじゃろうが、それもここまでじゃ。」
そして、女神が右手を高らかに上げ、コックピット全体に響き渡るように号令を出した。
「攻撃!準備!!」
「!!」
亮輔と祐介が何も言えず無言でバタバタ暴れる。
「あともう一つ。」
女神がさらに亮輔たちの計画の確信をつく。
「『挑発して飛ばされて助かる』算段なんじゃろ?」
亮輔はギグっとする。
「確かに五月蠅いハエどもじゃ!望み通り飛ばしてやろう!」
 

そう女神が言った瞬間、亮輔たちの目の前の光景が変わった。
周りに牢屋はない。手や足に錠もない。そこは見慣れたグラウンド。
そして真上には、、、女神の母船。


「街もろとも消してくれるわ!!」
女神が高らかに上げた腕を振り下ろした。
「撃て!!!」


亮輔達の真上の母船の中心に緑の光がグーーーーンと集まる。
あと宇宙船の光のレーザー。
それも今度は超特大だ。
母船が集まった光で眩しく緑色に光る。
「来る!!」
亮輔達はそのまま、
身動きが取れないまま
眩しい光を遮るように目を隠しながらその場でしゃがみこんだ。
ドーーーン! 
辺りを大きな爆発音が包む。


ドーーーン!ドーーーン!
立て続けに大きな爆発音が2回、3回、、、。
亮輔達はまだ生きている。
その音は街を破壊する音ではない。
レーザーが街に落ちたわけではない。
亮輔達が目を覆っていた腕をゆっくり開け、
つい今の今まで緑の光を蓄えていた母船を見上げる。
ドーーーン!ドーーーン!
尚も爆発音を上げ
至るところから炎を上げるのは女神の母船の方だった。
どこかから援軍の攻撃が!?
いや、攻撃を受けてる感じはない。
よく見ると爆発している箇所から緑の光が漏れる。
レーザーが逆流して自爆??
何にしても町が攻撃を受ける前に女神の母船の方が
次々と爆発を起こしながら街の空からはけるように
墜落していく。
「、、、。」
晒された命の危険。街の危険が去っていくのを未だ息も出来ずに見上げる2人。
もう、攻撃は終わったんだ。
街を危機から救ったんだ。
女神の母船が確実に墜落していくのを確認する。
脅威が去ったんだ、、、
そう思った瞬間。
2人は腰が砕けたかのようにすぐ脇の芝生の土手にヘタりこんだ。
「、、、。」
さっきまでは母船で覆い隠されて見えなかった何もない空を2人は見上げる。
「終わったな、、、。」
祐介がボソリと呟く。
「、、、ああ、、、終わった。」
ようやく訪れた安息。
思えばこの一日ずっと落ち着く事は無かった。
色々な事が一度に起こりすぎて全てを覚えていられない位。
やっと緊張感から開放され、寝転んだまま力が出ない。
何も出来ない。
でもそれが少し心地よくも感じた。
「、、、しかし亮輔。女神がこのグラウンドに飛ばす事まで予想しとったんか?」
ふと祐介が空を見上げたまま呟く。
その言葉の意味は、飛行戦闘の前、
亮輔達が工場から飛び立つ時まで遡る。




それは工場の中、、、。
「俺に計画がある。」
亮輔は復活した祐介と梨緒を前に語り出す。
「この能力。交互に使っていけば無敵のはずなんだ。倒されても墜落する前にすぐ次を連想すればいい。それで女神の船まで攻め込む。」
この計画に能力は不可欠。しかし相手の戦力、飛行性、母船の構造など
得体が知れない相手なだけに飛行戦闘での戦略は練れなかった。
しかし、この能力。それを扱う技術、知力がある。
どんな状況になろうと俺ならどうにか乗り越えれる!
いや乗り越えてみせる!
そう亮輔は自分に言い聞かせていた。
「攻め込んだら、まずは祐介が時間を稼いで欲しい。」
今まさに戦闘機に積込もうとしていた"武器"の箱を開けて
亮輔は祐介に言う。



母船に突っ込んだ後の母船内での行動はこうなっていた。
ドーーン!母船に突っ込んだ亮輔たちの戦闘機から、
まずは祐介だけが機関銃を持って飛び出る。
煙の中、亮輔の姿は宇宙人達には見えていなかった。



再び計画。
「その間、俺は母船のあちこちに出来るだけ多くこのタイマーを仕掛ける。」
亮輔がもう一つ積込もうとしていた箱を開ける。
「、、、時限爆弾?」
梨緒がその姿を見て言う。
「そう、これを仕掛けて女神の母船を内部から破壊するんだ。」
亮輔が爆弾を1つ手に取り得意げに言う。
「!!」
2人がその計画に、というよりも爆弾という恐ろしい兵器や発想を目の当たりにして驚く。
それにすぐさま梨緒が口を挟むように言う。
「いやいや!そんなの!あなた達も巻き込まれるじゃない!!」
爆弾とはそういうものだ。その場の物を吹き飛ばす。
ましてやこの計画は"母船に侵入して"、、、というもの。
その時亮輔たちは必ず母船の中にいる。
「、、、だから時限性にしたのさ。まずおそらくこれだけの大きな母船だ。大分装甲も厚いだろう。一発、二発戦闘機のミサイルを当てたところでビクともしないだろうし、こちらがダメージを与えるより先に反撃されてしまうだろう。だから内部から破壊する。出来るだけ多く仕掛けるさ。」
「で、この後が計画が、分かれるんだけど、
①そのまま能力が使えれば、能力を使い、爆発前に脱出する。で、問題は、
②能力が使えない、又はなんらかのミスで捕まってしまった場合。」
祐介と梨緒が聞き入る。
「その時は女神の能力であえて飛ばされる。」



女神が心を読んだ時の『ヤジを飛ばすんじゃ!』
『女神を挑発しろ!』『もう少しだ!』
というのにはこういう意味があった。



「つまりは"女神の能力を利用して"時間以内に脱出するって事?」
梨緒が亮輔に問いかける。
亮輔が爆弾を手に持ったまま歩きながら見解を発表する。
「そう。正直こっちの方になる可能性の方が高いんだ。
女神の能力はおそらく"心を読んで"、"好きな物を飛ばせる"なんだ。野球までの戦いやがそうであったように。梨緒からこの施設の情報を抜き出した事や関連情報でもそれは裏付けれる。」
祐介はすでについていけずぽかんと亮輔を見つめる。
「そして、ポイントはボクシング以降。今までなら一つ連想をすれば"場所"と"物"が両者共に作用されていた。」
「しかし、"ボクシング"からは違った。互い互いが能力を使い合う。その能力は相手には作用されない。」
「それはその後、女神が居なくなった後も続く。と言うことは、女神は"能力を譲渡"する事も出来るんだ。」
「その能力の違いに気付いた時、女神がいる時は女神の能力。いない時は譲渡された能力。違う作用が発動される、という仮説にたどり着いた。」
「だから女神の母船では女神の能力下に落ちる可能性が、高い。」
亮輔はその場で歩き回っていたのを止めると、祐介と梨緒の方へ向き直り、力強く演説した。
「だったらその能力を全て利用してやればいい!」
つまりは亮輔の作戦はこうだ。
まず、なんらかの方法で母船の内部に侵入する。
その後、祐介が武器を使って思い切り暴れて宇宙人の気を引いているうちに亮輔は母船のいたるところに爆弾を仕掛ける。
仕掛け終わった逃げる!のだが、能力が使えない事を考え、まず捕まる。
その後で女神の元まで連れて行かれるよう誘導して、
女神の元へ辿り着いたら女神のへの挑発を繰り返す。
その時、心を読ませて、焦らせ、どこかに飛ばされる。

「そして、時限爆弾の設定時間は今から2時間後!」
亮輔の語りを聞いていた祐介と梨緒が「あ!」と聞いた事があるフレーズにお互い見つめ合う。
「流石の爆弾も、出来るだけ多く設置するつもりだけど、それだけではあの空を覆い隠す程の母船の質量を落とすには破壊力が足りない。」
そう!女神がくれた情報
『2時間後にある街を破壊します』
状況をより絶望にしたといえるその情報すらも亮輔は利用しようと考えた。
「街を破壊すると明言した女神の母船の破壊力。2時間後。そのエネルギーが母船には溜められているはずだ。」
「その爆発的なエネルギーで内部から破壊してやればいい。」



つまりは全ては亮輔の計算のうちだった。
『女神が心が読めない』と、間違った推理をしたのも女神に心を読ませる為のフェイク。
「、、、まあ、飛ばされる事は分かっていたがこことはね。」
亮輔が苦笑いしながら言う。
「実際、ラッキーだったよ。梨緒を心配させないように言わなかったけど、逆上した女神に、マグマの中や深海に飛ばされる可能性もあったからな。」
祐介が驚いて根転がっていた身体を起こす。
「おいおい!そんな裏があったんか!無茶苦茶やないか!」
そんな祐介にフッと笑いかけ亮輔も答える。
「まあ、俺達が蒔いた種。勝つためにはリスクも必要だろ?」
今まで負けると分かった勝負には挑まなかった亮輔が自分を犠牲にしてでも勝つことに拘った。
そして祐介も、自分勝手で俺に付いてこればなんとかしてやる!そんな自分を捨て、勝つために亮輔に頼った。
勝利に拘った亮輔と協力して力を発揮した祐介。
今までにない2人の関係が勝利を導いた。
その亮輔の大胆さに祐介も思わず、
「ガハハハハ!違いない。」
豪快に大笑いして、もう一度大の字になって転がる。
「だろ?、、、ククク。」
亮輔も思わずつられ笑いする。
思えば何年ぶりだろう。
2人で笑いあったのは、、、。
「、、、。」
「、、、。」
一通り笑い終えると2人は少し黙り込んだ。
何もない青い空を見上げる。
清々しい風がなびく。
2人とも各々で過去の思い出を振り返っていた。
ずっと幼い頃から一緒にいる2人。
そういえば昔はこうやって笑い合っていた気がする、、、。
いつからだろう、、、。
いがみ合って争いだしたのは、、、。
そう思うと、祐介が口を開く。
「、、、亮輔、、、お前のそういう頭の良さ。優等生で周りにはいつも人が集まる。
そんなお前に憧れてたのかもしれん、、、。」
その祐介の言葉にあまりに考えていた事が同じでフッと笑ってしまい亮輔も答える。
「、、、俺もお前の、真っ直ぐで、常に注目を浴びて、周りがついつられて動いてしまう。
そんなお前に、あこ、、、」
そこまで言うと、急に恥ずかしくなり、鼻を掻きながら誤魔化す。
「嫌いじゃないぜ。」
「!!」
祐介はその返しに、ムクッと上半身を起こすと、
亮輔の頭をガシッと持ち、ワシャワシャと髪をかき乱す。
「この!素直じゃないのう!」
その顔は笑顔に満ちている。

「貴〜様〜ら〜!!よくもやってくれたな〜〜!!」
平穏を切り裂くようにドスの効いた声がどこからかこだます。
2人はその聞き覚えのある声にムクッと身体をあげ、
「まさか!」とキョロキョロ辺りを見渡す。
どこから聞こえたのか!?広いグラウンドのどこにも人の気配はない。
地面には母船の影が映るだけで、、、
いや、母船はもうないはず!これは光に当たった大きな人影だ!
「!!」
2人は同時にゆっくり空を見上げる。
何もない青空が広がっていた、はずの空。
そこには青いドレス。
大きな青い瞳。透き通るような白い肌。
そう。女神だ!
その光を浴びた出で立ちは、
初めて見たときのように美しく、しかし、ドレスや肌には少し焦げた跡。
更に美しく華奢な出で立ちにそぐわない
不釣り合いに光る黒い影が、、、それは、、、
右肩にバズーカ。右肩から掛けて持っているのは機関銃。
「ヤバい!!」
2人は這い上がるように土手を両手両足で必死に上る。

「八つ裂きにしてくれる!!」
女神が機関銃を
ドドドドドド!と連発する。 

チュンチュンチュン!と音を立てながら
2人の周りの土手の土や草が跳ね上がる。
土手を上がり頭を抱えながら逃げる2人。

「逃さん!!」
そこへ今度はドカーン! 
バズーカをお見舞いする。

「うわ〜〜〜〜!」
なんとか直撃は避けたものの前のめりに吹き飛ばされる2人。
ズサーっ!と地面を擦るように叩きつけられる亮輔。
勢いでゴロゴロと玉ころがしのように転がる祐介。
2人ともにダメージを食らいながらも
それでも必死に立ち上がる。
「やべ〜!とりあえずこんな見通しのいい所にいても恰好の的だ。姿を隠せる所まで行くぞ!」
亮輔が走り出しながら指を指す。
その指す先には校舎の箸にある"部室棟"。
それについて行くように祐介が走って横に並ぶ。
「亮輔!ここまで計算のうちか!?なんか考えはあるんか!?」
「、、、。」
亮輔は一瞬考えるも何も浮かばず。
「こんなん計算出来るか!!想定外だ!!」
とりあえず走るしかなかった。
バズーカに機関銃。
しかもこちらは無防備。能力もない。
そんな相手にどうやったって勝てるわけがない。
「とにかく逃げるぞ!」

巻き上がる煙から猛ダッシュで逃げる亮輔たちを女神が見つける。
まだ生きている。
「まだまだまだまだ!」
そこへ目がけて機関銃をドドドドドド!
さらに追い打ちをかけるようにバズーカをドカーン!
「、、、。」
女神が少し高く飛び上がり上空から状態を確認する。
煙は2人の姿を隠す。
女神はしっかりと目を凝らし安否を確認する。
このままがむしゃらに打ち続けてもいい。
しかし、それでは気が済まない。
ストレス解消なんて生ぬるい。
なにより逃げられてからの反撃。それでやられた仲間。
武器も能力も持っていない相手ですら
万に一つの可能性すら潰える。
確実に殺る。
女神の怒りのボルテージはマックスだ。
ブッとその煙から小さな2つの影が抜け出てくる。
「チッ!」
生きていたか。と、すぐにその姿を追い
機関銃を連発しながらスーパーマンのように頭を先にし
降下する。

ドドドドドド!
機関銃が降り注ぐ。
頭を隠しながらチラッと後ろの機関銃が降る方を見上げると
女神が銃を連打しながらミサイルのように真っ直ぐこちらに飛んで来ているのが見える。
「やばいぞ!思いっきり来とる!!」
焦り、全力で逃げる祐介。"部室棟"はもう目の前。
「分かってる!とにかくあそこまで走れ!!」
亮輔も全力で走る。

女神が真っ直ぐ飛びながらミサイルの照準をしっかり合わせる。
2人の姿が照準に入る。
グッ!と引き金を引こうとした。
その時!2人はタイミングよく散り散りに逃げて行った。
「くそ!運のいいやつらじゃ!」