「、、、。」
亮輔達の戦闘機があげる爆炎を眺めながら宇宙人も考えていた。
まるで"鷹"が獲物を捕らえるような、高速の縦移動に
優雅に空を舞う"燕"のような横移動。
そして、直進で向かってくる勇敢さで自分の機体に損傷を追わせた。
そのバリエーションの多さは驚異であった。
「次はどう来る?」

煙が開ける、、、
そこに堂々と現れたのはF−15(イーグル)。

《『三式戦闘機「飛燕」』→『戦闘機』=『F−15(イーグル)』》

F−15(イーグル)、、、アメリカの力の象徴
     である国鳥「鷲(わし)」の
     名前がつくこの機体は、
     その名にふさわしく、かつて速度、 
     運動性、上昇性、ミサイル性全て
     において最高と言われた戦闘機。
     未だ空中戦における被撃破記録は
     ない。






「負けてなお真っ向勝負とはやるのう!」
祐介が亮輔に言う。
「、、、いや、今回のは最高と言われた機体。性能が違うんだよ。」
真剣な眼差しで相手を睨みつせながら言った。
「それに、、、」
そして、グッと操縦桿は押す。
「ゲーム仕込みの腕には自信があるんだ!」

また向かい合った真正面からの勝負が始まる。
今度は宇宙人も機体を加速し始める。
その場で構えていても次は恐らく対処される。
相手は数多の手を持つ強敵!
そう宇宙人も感じていた。
「回避だけではなく、攻めねば勝てぬ。」

相手との距離が縮まる。
「オラオラオラオラ!」
初めに手を出したのは亮輔たち。
ドドドドドド!
機関銃を連射しながらそのまま相手から逸れるように急上昇。

宇宙人はその機関銃を避けるように下降。
すぐに機体を上に向きなおらせながら相手の位置を確認する。
亮輔達の戦闘機はもう高くまで上昇している。
「また、あの急降下か!させん!」

上昇した亮輔たちはすぐにジェットコースターに乗っているかのように急降下。
内臓が浮き上がるような重力が亮輔達を襲う。
しかし、怯まず尚も操縦桿を下降に向ける。

宇宙人はそれに気付いたかのように上昇。
「そうやすやすと上は取らせん!」
上昇しながらもビー!ビーと、レーザーを放つ。

「飛行戦闘のセオリーは相手の背後を取ること。」
亮輔たちは攻撃を躱しながらも戦闘機の向きを上下変えながら宇宙人の機体の背後に回りこもうとする。

宇宙人も同じように亮輔の戦闘機の後を追う。
お互いがお互いの背後を追う。
お互いが上昇、下降と同じ動きをしている為、
まるで同じ軌道にいる衛星のように
一定の距離を保ったまま同じ孤を描きまわる。
横に旋回。すると相手も横に旋回。
斜めに上昇。すると相手も斜めに上昇。
お互いが相手が視野に入った瞬間に攻撃をする。
<いたちごっこのような鏡の中を相手にしているような攻防。
しかし、それでも気を抜けば相手に背後を取られるのは必至。
どちらが背後を取るか。
技術と駆け引きが周回する。
だんだん今上を向いてるのか、下を向いてるのか、
どちらが空でどちらが地面かさえ分からなくなってくる。
急な上昇や下降によるG。旋回による遠心力で
三半規管がやられていくのがわかる。
感覚や集中力が鈍り、めまいもしだしてきた。
相手はどうであろう?しかし、一つ言えるのは
「このままではヤバい。」
相手が宇宙人である以上、こちらの常識は通じない。
相手はこの状況には慣れている!そう判断した方が妥当。
だとしたら、やる事は、、、
亮輔は急旋回し、相手に背を向けるようにその場を逃げるような離脱した。

もちろん宇宙人はこの好機を逃がす訳がない。
すぐに自分も旋回をすると亮輔達を追うように背後に
ぴったりとつく。

「後ろを取られたぞ!亮輔!!」
後ろを振り返り、迫りくる機体に祐介は慌てながら報告する。

ピーピー
ここぞとばかりに宇宙人はレーザーを放つ。

「来た!緑のビーム来たぞ!」
祐介が焦り亮輔の肩をポンポン叩く。
「分かった!分かった!どっちから来てる!?」
亮輔は速度を加速させながら祐介に問う。
祐介はすぐに確認する。
「右じゃ!右!」
「よし!分かった!」
報告を聞くと、伝わったようで
すぐ左の翼を上に戦闘機を傾ける。
ピーピー
そのすぐ下を間一髪でレーザーが通過する。
「よし!」
すぐに戦闘機を元の水平に戻し保つ。
「祐介!とりあえずこのまま走る!相手の動きを報告してくれ!」
 
ピーピー
宇宙人も亮輔達に追いつこうとレーザーを放ちながら加速をする。
右へ左へ。
レーザーを打ち込むが戦闘機に機体を傾けながら巧みに躱される。

気付けばせっかく中央付近まで攻めていた母船の下から抜け出しそうな所まで追いやられていた。
宇宙人はどこまで追っていくるのか。

宇宙人も母船の端まで来ている事に気付く。
母船の陰になっている部分の境界線のように光が差し込んでいる。
追うべきか、、、追わないべきか、、、
答えは既に出ていた。
「脅威は潰す。」

「まだ来とるぞ!」
祐介が宇宙人がまだ追って来ている事を確認。

始めに亮輔達の戦闘機がその光の境界線に吸い込まれるように消えていく。
それを真後ろからすぐ追う宇宙人の機体。
機体が光の境界線を越える。
「!」
一瞬暗がりからの光で眩しく目がくらむ。
と、その瞬間。
目の前に亮輔達の戦闘機の後部が接近してくる。
「まずい!ぶつかる!」
宇宙人は一気に機体を減速される。
しかし、目が眩んだ事で一瞬の判断が遅れた。
もうすでに減速をしていた亮輔達の戦闘機は
ぶつかる!と思いきや少し上昇をし、
宇宙人の機体の上部スレスレを減速しながら通過していく。
そう!これを狙っていた。
減速した戦闘機は
真っ直ぐ後退し、そして、着いた先は、、、

亮輔の戦闘機の目の前に宇宙人の機体の後部が見えた。
ついに背後を取った!
「もらった!!」
祐介がトリガーを握ろうとした。
「!!」

「させん!」
しかし、宇宙人はその場でバレリーナのようにクルッと旋回して見せた。

「その場で旋回出来るのか!」
<そして両者目の前で機関銃、レーザーの応酬。
ドドドドドド!

ビビビビビ!
タイミングはほぼ同時。しかもこの距離。

ドカーーン!
亮輔達の戦闘機は躱せるはずがなかった。