時はその30分ほど前に遡る、、、。
「よし!やってやるよ!」
亮輔は女神の策略にはめられ、自分たちのせいで人類が
危機に直面している事を後悔するが、
梨緒の後押しでその責任を果たすべく施設の中で女神への報復を決意。
「梨緒!梨緒が防衛庁と繋がっているなら、防衛庁の戦力を集めれないか?」
亮輔が梨緒に確認を取る。
しかし、梨緒は首を横に振った。
「防衛庁の中でもこの施設が一番の拠点だったの。でも女神によって施設の人たちはどこかへ飛ばされてしまった、、、。ほかの施設や自衛隊に連絡を取ろうにも無線もこの有様。今から連絡を取りにどこかへ移動する時間もない。」
そう!女神と対抗するにはあの空を覆うほどの宇宙船を相手にする必要がある。
しかも、2時間後には自分たちの町が破壊される。
それまでにはそれに対抗しうる戦力を集める必要がある。
しかし、そんな事は不可能だった。
この2時間でどれだけの戦力を?どのように集めればいい?
亮輔はそのあまりにも壮大な事に言葉を失ってしまう。
しかし黙っているだけでは時間が過ぎるだけだ。
その不安を断ち切るように首を左右に何度も振り、
街の為、人類の為にも自分がなんとかしないと、、、。
と、すぐに気持ちを切り替える。
「、、、まずは今ある戦力を確認すべきだ!」
とりあえず今出来る事はこの施設にあるもので太刀打ちする事。
国を守る為の施設だ!何か希望はあるはずだ!
しかし、現実はそんなに甘くは無かった。

「、、、、!」
梨緒に案内されて行き着いた先には敵の襲来に対抗するべく置いてあったであろう戦闘機や軍用ヘリコプターが並べてあったが、
亮輔と祐介の攻防の流れ弾でところどころ破壊されている。
武器はまだ使えそうなものが残っているが
肝心の女神の宇宙船まで攻め入る為の飛行機がないのであればどうしようもない。
「、、、くそっ!」
何であの時感情に任せて戦ってしまったのか。夢中で周りにさえ気付かず。
"舞台"という言葉で今まで通りに好き放題戦えると
そう思い込んでしまった。
いや、根本的に今まで戦ってきた舞台にしても
本来は自由に使えるはずがない場所。
しかし、思い込んでしまった。この能力は神の与えた力なのだと。
そういう部分でも女神の周到さが伺えた。
自分に嫌気が指す。
しかしそれでも考えるしか無かった。
女神が悪いんだと。仕方が無かった。
女神の能力葉騙されるほどの強力な力だったのだと。
そう、あの力が、、、。
そう思った時、ふと亮輔の脳裏に一つの可能性が浮かんだ。
「もしかしたら、、、。」
そう言葉だけ残して亮輔は急に走り出した。
「亮輔?」
梨緒も後を追う。

そこにはこと切れた祐介の姿があった。
苦痛に苦しむ祐介の表情。その脇には殺害に使われた注射器が落ちていた。
「、、、。」
「可能性としては十分!試す価値はある!」
落ちている注射器を拾うと、
これまでの戦いを走馬灯のように思い出す。
「今までは梨緒を巡る戦い。」
「しかし、、、」
「まだ、戦いは終わっていない!!」
そして連想をする。

《『うつ』→『注射器』=『治す』》

そう亮輔が連想した時。
こと切れていた祐介の身体が金色に輝いた。
「そうだとも!女神の能力は強力だ!」
金色の中の祐介の表情がみるみる安らいでいく。
「しかし逆にそれは今!」
祐介の表情が苦痛から平常に戻った時。
「女神に牙を剥く!!」
祐介がパチリと目を開けた。
ガーーーーー!
スイッチが入ったように急に起き上がった祐介。
「りょ〜〜う〜〜す〜〜け〜〜!!
き〜〜さ〜〜ま〜〜!!!」
唸りを上げると、
首を絞めるように、亮輔の胸ぐらを強く掴む。
亮輔はその強力な絞めに顔色を変えながらも
目を逸らし、無抵抗で耐える。
その光景を横で見ていた梨緒が静止に入る。
「やめて!祐介!!」
怒りに表情を変えていた祐介。
しかし聞き覚えのある声に「ん?」と、少し我に返る。
引き剥がそうと祐介の腕を掴んでいる梨緒の姿にようやく気付く。
じっと梨緒を見つめると、状況が掴めないまま
すぐに亮輔の方に向き直り
「どういう事じゃ?」
眉間にシワを寄せたまま、
だが、肩の力はスッと抜け、亮輔の首元からは
ゆっくりと手が外された。