「耕平、違う!今は風があるから、フワッとしたパス投げると風に流れちゃうからダメなの!」

陽菜の指示が土手に響く。

「大地はもう少し走って貰いに行って?サッカー部なんだから頑張るの!」

「陽菜、スパルタだね」

陽菜に散々しごかれている耕平と大地の様子を見て美咲がり呟いた。

今、練習してるのは、ショートパスの連携と、ロングパスだ。ロングパスを投げるのは俺だ。

「お兄ちゃん、早く」

陽菜が俺を睨む。あのな…投げる方も結構疲れるんだからな。しかし、陽菜は満足がいかないらしく何回も俺に投げさせた。

「じゃ、次でロングパス最後にしようか。お兄ちゃん早く!」

三十分も投げさせられた俺の右肩は限界だった。俺の投げたフリスビーは風に煽られ、明後日の方向に行ってしまった。

「…信じられない」

陽菜の俺を見る目が冷たい。

「じゃあ陽菜が投げてみろよ!!だいたい俺が…」

「しょうがないじゃない!美咲があんたのフリスビー壊したんだから!」

陽菜も疲れていたんだろう。叫ぶように返して来た。

「あ……あの、陽菜、裕也……ごめん」

美咲がペコリと頭を下げる。やはり五日間では直すことも買うことも出来なかったのだ。

「だいたいフリスビーなんて一杯あるじゃん」

耕平がフリスビーがたくさん入った箱を指差す。これは、わざわざ渚が買ってくれたものだ。

「いや…あれは…」

俺が説明しようとした時だった。