「それっきりなんだ。莢未のこと。俺は莢未の両親に謝ることすら出来なかったんだ」

自分で自分を殴りたかった。全部を中途半端で終わらせてしまった。

「……莢未は恨んでるかな?恨んでるよね。私のこと。私がいなければ、莢未は……」

そう陽菜はあの日から変わってしまった。陽菜は、自分が莢未の全てを奪ってしまったと、自分を責め続けた。

『絶対、莢未を助けてくれる』という信頼も裏切られた。あの救急隊員の態度で、情さえ無くしてしまった。そんな中、陽菜が出した答えが『お金は裏切らない』だった。

泣き出してしまった陽菜を美咲が優しく抱きしめる。

「恨んでないよ、莢未はきっと…ううん、全然恨んでないよ…」

「何で…?何で美咲がそんなこと言うの?」

「だって…私が莢未と同じ立場だったら、莢未と同じことするもん。ねぇ、裕也、陽菜」

美咲は、陽菜を抱きしめながらも俺を見つめてくる。

「私は…あなた達の為なら死ねるよ?」

そう言う美咲の瞳は、とても切なかった。

「愛に死ぬってのが女の永遠の夢なんだよ」

「美咲…」

陽菜はまだ、美咲の腕の中で泣いていた。だけど、心なしかその顔に曇りはないように見えた。

なぁ、莢未。君は、俺と会えて幸せだったか?

俺は、幸せだった。初めて、君に夢中になった。

だけど、何でかな?

何で君は、俺の元から消えてしまったんだ。

そう…『消える』という表現がピッタリだった。

いくら何でも、不自然過ぎる救急隊員の態度…。
まるで、俺達と莢未を会わせないようにしていたようにも見えた。

そして…俺は君の墓さえ知らない。

「莢未…君は死んだんだよな?」

俺は星のペンダントを握りしめる。そこにはまだ、莢未の温もりがある気がしてならなかった。