その日は朝から何か嫌な胸騒ぎがしていたんだ。

「莢未、早く!!」

「陽菜、待ってよ。今、かわいく化けてる途中なんだから!」

君は、五分ほどの軽いメイクをした後、星のペンダントを首にかけた。

「んっ。よし!」

そういって鏡の前で笑う君を、不覚にも可愛いと思ってしまった。

「ゆーちゃん、行こう?」

「……なぁ!やっぱり止めにしないか?今日遊びに行くの……」

俺の言葉に、陽菜の顔付きが一気に変わる。

「何言ってるの?昨日莢未と二人きりにさせてあげたんだから、今日一日くらい、莢未貸してよ!」

「それはそうだけど…」

「もう!じゃあ莢未行こう?別にお兄ちゃんなんていらないし」

すると陽菜は莢未の服の袖を引っ張って家から出ていった。

「…おい!待てよ!」

「誰が待つもんか!」

陽菜は、俺に舌を出したまま走っていた。

…それが災いしたのか、陽菜は飛び出して来た車に気付かなかった。

「陽菜っ、危ない!!」

俺は足をこれ以上なく動かしたが、間に合わない。

「キャー!!!」

辺りに、陽菜の悲鳴と、激しい衝突音が響いた。