部屋に入ったものの、いつものように会話は弾まなかった。お互いにどこかよそよそしい感じだったのを良く覚えてる。

「莢未、別にそんなに身構えなくてもいいよ。いつも通り、気楽に話そ?」

「え……あ、うん!そだね!」

そこからは次第に、口数が増え、君の表情も柔らかくなっていった。俺と君の話のネタは、不思議と毎回尽きなかった。それは今日も同じことで、気付けば空には星が輝いていた。

そんな時、君がポツリと呟いた。

「星と月ってさ。こうやって見ると、近いけどホントは…凄く離れてるよね?」

「どうした?急に……」

俺は嫌な胸騒ぎを感じていた。そんな悲しい顔をしている君、俺は初めて見た。

「……私、思ったより、ゆーちゃんこと知らないのかもしれない」

すると君は、俺の右手に何かを握らせて来た。
手をゆっくり開いていくと、そこには、月をかたどったペンダントがあった。

「ゆーちゃん、私がゆーちゃんを見守る星になるから、ゆーちゃんは私を照らす月になって?」

そして俺らは、いつもよりずっと深くて永いキスを交わした。

君の…想い伝わった。
確かに伝わったよ。

次第に、苦しくなったのか、君が唇を離す。

離れた直後の唇と唇の間には銀色の糸が伸び、プツリと切れた。

「ゆーちゃん、大好き」

「俺もだよ、莢未。愛してる」

その夜、俺と君は初めて繋がった。

永遠と思いたかった、君との時間。皮肉にも、それが君との最初で最後の…繋がりだったんだ。