「ひ……陽菜、何でいるんだよ!」

確か陽菜には手打ち金としてブランドの財布を渡したはずだったのに……。

「ゆーちゃん……誰?」

心なしか、そう言う君の声はいつもよりトーンが低い。

「ああ、こいつ俺の妹の……」

「初めまして。陽菜です。莢未だっけ?いつもお兄ちゃんから聞いてるよ。よろしくね?」

「可愛いー!!」

君は陽菜に抱き着く。 そして陽菜にほお擦りする。

「こちらこそよろしくね!陽菜!」

陽菜は初対面の人にも平気で呼び捨てにする。だから普通は、引き気味になってしまうのだが。

君は違ったね?今思えば、だから陽菜が懐いたのかも知れない。

「じゃあお兄ちゃん。私は約束通り消えてあげるね?せいぜい楽しみなよ?」

それだけ言うと、いつもより上機嫌で陽菜は家から出ていった。

「陽菜かぁ……。もう、ゆーちゃん。可愛い妹いるなら言ってよー」

「わりぃわりぃ。んじゃ、俺の部屋行く?」

「…あ、うん」

俺の部屋に行く階段を、いつものように、俺が左側、君が右側を歩く。

それなのに、いつもと同じ事を繰り返してるだけなのに、何でこんなにも心臓が忙しく動いてるんだろう?